« 急速に増え続ける不適切会計事案(まだまだ増える可能性あり) | トップページ | 有斐閣「ジュリスト」2022年3月号に拙稿を掲載していただきました。 »

2022年2月22日 (火)

人材価値の開示は本当に投資判断に資するものだろうか?

日経新聞2月19日朝刊に「人材価値の開示、投資判断を左右-日米欧、年内にも新基準」なる記事が掲載されており、上場会社には多様性、社内教育、離職率等の開示が求められるようになる、と報じられています。企業価値向上のためには無形資産に光を当てる必要があるということで「人材」の価値を評価する必要があるそうです。

私見ではありますが、「人材」は「能力」だけでは企業価値向上に結び付かないと思います。「能力」×「ヤル気」=パフォーマンスであり、「ヤル気」を出す組織がなければ「良い人材」であればあるほど「離職率」の高さに結び付くのではないかと。その「ヤル気」ですが、私は「人材」のネットワーク(「助けて」と言える環境)と当該企業の組織風土だと考えます。つまり、いずれも無形資産である「人材」「ネットワーク」「組織風土」が評価基準となることで、はじめて無形資産が投資判断を左右するものになると思います。

たとえば上記記事では、この夏にも情報開示に関する指針が公表される予定だそうで、「女性や外国人社員の比率」「中途採用者に関する情報」「リスキリング等の社員教育」「ハラスメント行為の防止策」などが開示対象になる見込みのようですが、外国人機関投資家が求める人材開示は「従業員の給与水準」「従業員教育のコスト」「事故件数」「離職率」といった他社比較が可能な基準であり(英国シュローダー社)、やや開示対象に違いがあります。

そもそも「人材価値」に投資家が注目しているのは、新型コロナや気候変動、地政学(経済安保)に象徴されるVUCA(不確実性)の時代における企業の経営環境適応力を知りたいわけですから、企業の持続的成長にとって「人材の多様性」を重視するか、「ヤル気を促すこと」を重視するか、そこは企業と投資家の対話によってすり合わせをしていくしかないと考えています。おそらく「人材価値の開示」はそのためのネタになるはずです。

ただ、本当に「人材価値」を開示するのであれば、まずは自社の現状認識からスタートしなければ説得力がないと思います。なぜハラスメントが多いのか、離職率が高いのか、理系大学生からの就職希望ランキングが低いのか。。。だからこそ、どのような人材を育成・採用したいのか、そのような施策として何をしているのか、といった流れがないとエンゲージメントのネタにもならないのではないかと。どこかの企業の「好事例集」が公表されて、これを参考に・・・といった(経営企画や人事部が忙しくなるだけの)流れになるのだけは避けたいですね。

|

« 急速に増え続ける不適切会計事案(まだまだ増える可能性あり) | トップページ | 有斐閣「ジュリスト」2022年3月号に拙稿を掲載していただきました。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 急速に増え続ける不適切会計事案(まだまだ増える可能性あり) | トップページ | 有斐閣「ジュリスト」2022年3月号に拙稿を掲載していただきました。 »