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2022年2月14日 (月)

取締役会改革-社長の選解任・後継者計画の実践で「一番大切なこと」を考える

日本の上場会社において、2021年の改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応は、昨年末のガバナンス報告書の開示でほぼ完了したものと思います。大きな上場会社では、外部アドバイザーを交えて、取締役会の実効性評価を行っているところも多いようですが、気になっておりますのが指名諮問委員会(任意の委員会を含む)の実効性です。

社外取締役が過半数もしくはそれに近い構成となる指名諮問委員会が「社長の選解任」「サクセッションプラン」の中心的役割を占める、ということが「勇ましく」推奨されているわけですが、いざ実践するとなると難題にぶつかります。それは「社長に指名された人はいいけど、指名レースに敗れた人はどうなるの?」「指名レースに敗れた人に、何を言えばいいの?」という問題。

これまでの「なんちゃって指名委員会」であれば、社内慣行をなぞるだけでよかったので、社内に波風が立つこともなく、社外取締役にもストレスが溜まることはありませんでした。しかし「後継者育成計画」を立てて、社内候補を6人⇒3人⇒1人と絞るなかで、指名レースが行われるわけですから、当然のことながら「社長レースに敗れた人」が出てきます。「派閥の論理」や「鶴の一声」によってレースが終わればまだしも、指名諮問委員会の評価によって勝敗が決まるとなると、その敗者となった方にはどうナットクしてもらうのでしょうか。

海外では「経営者市場」がありますので、たとえ指名レースに敗れたとしても、他社のCEOとして活躍する場面もありますが、日本にはそのような市場はありません。かといって「指名レースに敗れた」ということがある程度知られた社内に残ったとしてもモチベーションは上がらないし、年功序列が慣行とされる中で敗者復活戦もないはずです。社長指名レースに残るほどの人は、会社にとっても貴重な人材ですが、そのような方が会社に残るにせよ、去るにせよ、会社にとっては大きな損失ではないかと(とくに最終レースにまで残った人であればなおさらです)。つまり、社外取締役が熱心に職務を遂行すればするほど、(有力な経営人材を失うことによって)企業価値が下がるというジレンマに陥るのではないでしょうか。

もしガバナンス改革に熱心な会社で、そのあたりをうまく対処しているところがあれば、ぜひ教えていただきたいところです。「取締役会改革」という方向性には反対しませんが、社外取締役が期待された役割を果たすためには、その前提となる部分に「地ならし」が必要です。その「地ならし」まできちんと配慮しなければ、やはり取締役会改革は「なんちゃって改革」のままで終わりそうな気がします。

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