社外取締役を「お飾り」にしないための処方せん-ダイバーシティとスキルマトリクス
(2月9日13:35 更新あり)
本日(2月8日)の日経産業新聞に、「お飾りにしない社外取締役の在り方」として、企業法務で著名な弁護士の方のロングインタビューが掲載されていました。経営者の「お友達」を排除するための仕組みや社外取締役が独自に情報収集することの重要性を語っておられましたが、共感できる点が多いですね。「社外取締役が能動的に情報を入手する発想は、従来はあまりなかったが、本来はそうすべきだし、もし怠れば経営責任を問われる可能性も心掛けるべき」との意見は全く同感であります。
先週2月2日、私も(社外取締役として)エンゲージメントのオファーを受けておりました海外の大手機関投資家と1対1でのWeb-Meetingに臨席いたしました(なお、取締役会事務局1名、通訳1名も入りました)。意見交換の内容については詳しくお話できませんが、冒頭「法律資格者であり、ガバナンスに詳しい山口サンと話がしたい」との説明を受け、約80分ほど、ESG経営やガバナンス、今後の「収益を上げるべき事業領域」を中心に対話が続きました。
途中で何度か投資家の要望に対して(生半可な約束は厳禁と思い)「お茶を濁す」場面もありましたが、(次に指名される機会があれば)自身の立場で「ほしい」と考える会社情報を収集し、それを自分なりに咀嚼したうえでの「Yes」「No」を明確にしておく必要があると思いました。また、海外投資家とのエンゲージメントを通じて「なるほど、ダイバーシティやスキルマトリクスはこういう場面で役に立つのだな」と、感じましたね。
投資家は単に社外取締役と話がしたくて貴重な時間をエンゲージメントに使うのではなく、投資家が将来価値判断に必要と考える会社情報を収集し、不足があればそれを「社外取締役に対する行動要請」へとつなげたい、という思惑が強いはずです。取締役会構成員の多様性(ダイバーシティ)が強く要請されるのは、経営面でも、株主による監視の面でも、それぞれの社外取締役が情報収集を能動的に行う場面で初めて活かされる。また、スキルマトリクスがあれば、どの社外取締役にアポイントをとれば有用な意見収集や要望を出せるか、投資家にとってもたいへん便利です。
(追記)ある運用会社の方から「このような視点で社外役員とのエンゲージメントに臨むことは機関投資家に課されたフィデューシャリー・デューティーとして当然」との意見をいただきました。ありがとうございます。
2021年12月末時点における上場会社の「改訂コーポレートガバナンスコードへの対応状況」が1月26日に公表されましたが(東証)、企業の中核人材への多様性確保にコンプライしている1部上場会社は全体の66.8%です。本当に社外取締役が情報収集に熱心であれば、人材の多様性やその開示(スキルマトリクス)は会社経営にとってプラス思考でコンプライできるのではないでしょうか。
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