« 2022年2月 | トップページ | 2022年4月 »

2022年3月31日 (木)

日本郵政グループ「グループコンダクト向上委員会」の委員に就任いたしました。

昨日(3月30日)リリースされましたが、日本郵政グループが新たに設置する「グループコンダクト向上委員会」の委員に就任いたしました(設置は4月1日付け)。かんぽ生命HPでは、以下のように紹介されています。

日本郵政株式会社(東京都千代田区、取締役兼代表執行役社長 増田 寬也)、日本郵便株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長兼執行役員社長 衣川和秀)、株式会社ゆうちょ銀行(東京都千代田区、取締役兼代表執行役社長 池田憲人)および株式会社かんぽ生命保険(東京都千代田区、取締役兼代表執行役社長 千田哲也)は、グループコンダクト向上委員会を設置することといたしましたのでお知らせいたします。 日本郵政グループの全社員・役員が、日本郵政グループの経営理念の実現を目指し、グループ行動憲章を実践していくためのグループコンダクトを向上させる取組みについて、外部有識者による助言をいただき、改善などに取り組んでまいります。

他の委員の方々のように金融実務に詳しいわけではありませんが、グループにおいてここ2、3年ほど不祥事が続いておりましたので、グループ挙げて組織風土の改革に前向きに取り組むことの支援をさせていただきます。なお、リリースにもありますように、当委員会はモニタリングが中心なので、当職が委員長を務めております総合電機メーカーのガバナンスレビュー委員会職務への影響は軽微です。

| | コメント (1)

2022年3月28日 (月)

「社外役員特化型D&O保険(会社役員賠償責任保険)」は必要と考える

今年も日本監査役協会の研修講師を担当させていただいておりまして、「攻めと守りのガバナンスを支える会社役員賠償責任保険と会社補償契約」とのテーマで講演いたしました。しかし、この16年間でもっとも低調です(笑)。いつも企業不祥事や有事のガバナンスをテーマにすると満員御礼の日が続くのですが、今年はホントに聴講される監査役員さんが少なくて閑古鳥が鳴いております(´;ω;`)。聞くところによると「サイバー保険」に関連する講演も集客力が低いそうで、会社役員の皆様の「保険や補償ということへの関心」がやや低いことを知りました。

ということで、少しへこみぎみだったのですが、旬刊商事法務の最新号(3月25日号)にて、オリックス グループ人事部報酬チーム兼グループ総務部 担当部長でいらっしゃる山越さんの論稿「社外役員のリスクと特化型D&O保険」を拝読して、「うんうん、そうだよなあ」と少し元気が出ました。業務執行役員とは別に社外役員(社外取締役や社外監査役)だけに特化した会社役員賠償責任保険を締結することも検討する必要があるのではないか、とのご意見はまさにそのとおりかと。

山越さんの上記ご論稿に書かれているわけではありませんが、私が会社役員全体を通して保険や補償契約に関心を持っていただきたいと考えているのは、以下の4つの理由(役員責任をめぐる近時の経営環境の変化)からでして、敗訴リスクはあまり高くなくても、提訴リスクは確実に高まっており、弁護士費用を含めた個人負担についての付保は必須の時代ではないかと思うからです。とりわけ社外役員は「保険に加入しているから安心」「責任限定契約を締結しているからリスクを回避している」では済まないのではないかと。

まずひとつめは「世間を騒がせる企業不祥事の頻発」により、会社自身が自浄作用の一環として不祥事発生当時の役員を提訴することが増えていることです。つぎに国内外でのM&A(組織再編)が急増し、支配権の交代によって旧経営陣が提訴されるリスクが増えていることです(これは上場、非上場にかかわらず役員のリスクです)。3つめにモノ言う株主(機関投資家)が、その背後の実質株主への説明責任を果たさねばならない状況が増えているということ(つまり、どれだけ回収できるかわからないが、役員を提訴して司法判断を仰ぐことで説明責任を果たす、ということ)です。4つめは役員を提訴する株主の「代表訴訟のハードルが低くなってきた」ことです。証拠収集には公益通報が活用されることが増えていますし、原告側訴訟代理人の力量も変わってきたことによるところかと思います。

ほかにも損害賠償債務が「不真正連帯債務」であるがゆえに、責任限定契約は求償権に対抗できないのではないか、といった論点もありますが、ここでは法律論については言及いたしません。いずれにしても、こういった問題に社外役員はどのように対応されているのでしょうか。以前にも書きましたが、私はニッセンホールディングスの社外取締役を退任する際、D&O保険についてはランオフ・カバー条項を付けていただきましたし、さらに念のため会社側と補償契約(役員退任後も一定期間は補償する)を締結しました(幸い、法人が消滅することはなかったですし、リーガルリスクが顕在化することはありませんでしたが・・・)。

大株主から社外取締役が選任されることが増えて、社外取締役や社外監査役も「一枚岩」ではなくなってきた時代となりました。社外役員ではありませんが、会社から(辞任要求を拒否した)常勤監査役さんが損害賠償請求訴訟を提起される事件も最近の判例時報に掲載されています。これだけ取締役会改革が進んでいる状況ですから、役員間や株主との間で意見の食い違いが裁判沙汰に発展することが増えても当然です。したがって会社側の保険料負担で「社外役員だけを被保険者とする会社役員賠償責任保険」を締結することも、約款(社外役員特別枠特約)だけでは対処しきれない部分をカバーするものとして検討する必要があるように思います。また、(社外役員に限った話ではありませんが)この3月総会までに、ネットで確認できるだけでも40社ほどの上場会社(比較的大規模な上場会社が多い)が役員と補償契約を締結していることが確認できますので、会社補償契約の活用も検討すべきです。

| | コメント (1)

2022年3月23日 (水)

今後注目すべき「法人処罰」に関連する2つの論点

ひさしぶりの更新です。といってもあまり時間がないので要点のみですが。

3月22日の日経ニュースでは、SMBC日興証券が金商法違反(相場操縦罪)で立件される見込みであることが報じられています。先日の日産自動車の法人処罰(罰金2億円)を認めた裁判とともに、今後の展開が注目されます。

3月7日に「日産自動車・金商法違反事件-法人処罰と役員の法的責任」なるエントリーを書きましたが、甲南大学の梅本先生「法人に対する罰金・課徴金と役員等の損害賠償責任-オリンパス事件判決を手がかりとして-」と題する高橋教授(京都大学)のご論稿があることを教えていただきました(どうもありがとうございます!)。なるほど、法人に課される課徴金や罰金について、これを法人の損害として会社役員に賠償請求できるかどうか、ということは研究者の間でも議論されているのですね。たいへん興味深い論稿です。

そしてもうひとつ、法人処罰との関係で興味深い論点は(企業の内部統制システムとしての)コンプライアンス・プログラムの導入です。もしコンプライアンス・プログラムを導入して実践していれば、不幸にして法人が起訴された場合にどのような法的効果が発生するか、という論点です。日本ではまだ裁判上の効果があまり議論されていませんが、課徴金や罰金に裁量の余地があるかぎりは、処罰が軽減されることにつながり、また役員の損害賠償責任を基礎付ける根拠事実の認定にも影響が出てくるのではないかと思います。私個人としては、法的な理屈の上で問題はあるものの、実務的に検討するだけの価値はあると考えています。

このあたりは、もう少し時間に余裕がでてきたときに、日本企業における内部統制の議論の深化のひとつとして詳しくお話したいところですが、とりあえず「頭出し」程度で失礼します。

| | コメント (1)

2022年3月15日 (火)

公益通報者保護法に基づく事業者等の義務への実務対応

Img_20220314_211715355_400

3月14日に公表されたグローリー株式会社(東証1部)の社内調査報告書を読みますと、グループ会社の経理担当者が21億円も着服横領できる体制(グループ会社の内部統制の不備)というものは本当におそろしいなぁと思いますね。しかし、いくら経理の属人性がやむを得ないものであったとしても、10年以上も犯罪行為を繰り返していた担当者の「立ち居振る舞い」には「気配」はなかったのでしょうか?急に身なりが贅沢になったり、ギャンブルの話をするようになったり、生活が派手になったり。上司が銀行口座の取引明細を確認して発見したときの驚愕が目に浮かびます(以下本題です)。

さて、改正公益通報者保護法の施行を目前に控えまして、たくさんの事業者の皆様よりご相談を受けるようになりましたが、今回は法律の性格が少し変わりましたので(民法の特則的性格+行為規制的性格)、ご理解いただくのはなかなか難しい。

ただ「難しい」と言ってるだけでは、企業が行政処分の対象になったり、役職員が刑事罰を受けるリスクが現実化するかもしれず、せめて「内部公益通報対応体制の整備・運用」と「対応業務従事者の決定」に関する方針だけは5月の取締役会までに決議をしておきたいところですね。ちなみに2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂に関する金融庁パブリックコメントにおいて、原則2-5の「内部通報に係る適切な体制の整備」にあたっては、令和2年の公益通報者保護法の改正が施行されれば、当該改正内容も踏まえてご対応いただくことが考えられます、と「考え方」が示されていますが、体制整備方針や従事者決定方針は施行前に「その他の重要な業務執行の決定方針」(会社法362条4項柱書)として、取締役会決議を経て定めておくべきではないかと。

ということで、改正公益通報者保護法への企業の実務対応として、いま読んでおいて間違いないのが「公益通報者保護法に基づく事業者等の義務への実務対応」(中野真弁護士著 商事法務2022年3月12日発売)です。消費者庁での法改正及び指針案の策定を担当された中野弁護士(現在は渥美坂井法律事務所・外国法共同事業に所属)のご執筆によるもので、消費者庁による「指針の解説」を詳しく解説されていて、たとえば上記のように「せめてここまでは取締役会における決議が必要ではないか」と、あまり誰も触れてこなかった論点にもズバリ触れておられます。「指針の解説」といっても、単なるガイドラインの解説ではなく、法令違反になるかならないか、という重要な点の解説です(この点すら、まだあまり理解されていないのです)。

企業の顧問弁護士をされている同業者の皆様も、問い合わせへの対応に難儀しているかもしれませんが、ぜひ事業者の義務に照準を合わせている本書をご一読いただければ、なんとか対応できそうな気がいたします(私も、グループ通報制度への改正法-指針を含め-の適用問題をはじめ、企業側の数々のご質問への回答に苦悩しておりますので、活用させていただきます)。

| | コメント (1)

2022年3月 8日 (火)

投資家派遣の社外取締役と、独立社外取締役とのコミュニケーション

本日(3月7日)の日経朝刊では「役員に投資家、統治強化へ 利益相反など課題に-米国発『ボード3.0』」なる見出しで、日本企業でも長期投資家を社外取締役に迎え、取締役会の情報収集力やアクティビストとの交渉力などを高める取り組み、いわゆる米国発の「ボード3.0」と呼ばれる動きが注目されていることが報じられています。最近、世間の流れに追いついていないので初めて知りましたが(^^;)、ボード3.0の考え方は、今年6月のCGSガイドラインの改訂に盛り込まれる可能性があるそうです。

私が世話人を務めております社外役員の自主研究会の会合(3月5日)でも、社外取締役間におけるコミュニケーションの在り方がテーマでして、「大株主から派遣されてきた社外取締役さんにはどこまで重要な議論に参加してもらうか」ということが問題になっておりました。これだけ取締役会に社外取締役が増えてきますと、重要案件の成否は社外取締役の議決権行使にかかってくるわけで、社外取締役間で取締役会直前に開催する「社外役員連絡会」の審議内容に、大株主から派遣されてきた方も加えてよいか、という問題です。

上記記事にもあるように、機関投資家等の大株主出身の方は一般株主との間で利益相反の関係になるので、フェアーディスクロージャールールに従って、社外役員間の協議にはご遠慮願うのが筋なのでしょうね。もちろん「私は監督者として職務を行うのであり、利益相反を疑われるような行動はしない」「会社側でチャイニーズウォールを敷いているから心配ご無用」との意見もあるかもしれません。しかし、今回のSMBC日興証券のように、プロ中のプロでもチャイニーズウォールに穴があくような事態もあるわけですから、ここは「外からどう見えるか」という判断基準で対応したほうが(少なくとも独立社外取締役の立場からは)無難のような気がします。

以前、私が社外取締役を務めておりました某上場会社では、大株主から派遣されていた社外取締役の方もおられましたが、このあたりはきちんと理解しておられて「本日は、私は社外役員連絡会には参加しないほうが良いと思いますので欠席します」と自ら申し出ておられました。「独立性」や「利益相反」という問題は、とても曖昧な概念なので、問題に直面した際の「気づき」が大切ではないかと思います。

ちなみに当ブログでは再三申し上げておりますが「非常勤取締役」のほうが企業価値向上には寄与すると私は思っております(業務執行を行う社外取締役、つまり会社法上の社外取締役ではない非常勤役員です)。「一緒にリスクを背負う社外役員」だからこそ社長は意見を尊重し、事実上の監督機能も果たせると思うのですが、あまり話題にならないですね(笑)

| | コメント (1)

2022年3月 7日 (月)

日産自動車・金商法違反事件-法人処罰と役員の法的責任

日産元役員さんの刑事被告事件で、元役員の方に有罪判決が出ましたが、同時に法人としての日産にも有罪判決が出ました(罰金2億円)。判決文は読めておらず、ニュースで伝えられているところしかわかりませんが、法人に対しては「ガバナンスが機能していなかったこと」を理由として有罪判決が出たとのこと。また、日産は、この法人に下された有罪判決については、社内で検討したうえで控訴しないそうです。

ここで素朴な疑問ですが、この判決を受けて、日産は有価証券報告書の虚偽記載が行われた当時の取締役会構成員に対して損害賠償請求はしないのでしょうか。少なくとも、この罰金2億円については会社側の明確な損害が発生したものであり、「ガバナンスが機能しなかった」ことを理由とした有罪判決に対して控訴しないということであれば、自浄作用を発揮させることが現在の取締役には求められていると思うのですが(もし監査委員会が損害賠償を請求しないのであれば、株主代表訴訟が提起されるかもしれません)。

金商法違反に基づいて、法人に課徴金処分が課されることについては争わず、後日、法人を被告とする民事訴訟では違法行為を争うことについては「課徴金制度と民事賠償制度との趣旨が異なるために、問題なし」とされた裁判例はありますが、今回のような事例に関する裁判例はあるのでしょうかね?株主代表訴訟が提起された場合や金商法に基づく損害賠償請求訴訟が提起された場合、原告側は今回の裁判例をもとに不正行為当時の役員に対して監視義務違反がある、虚偽記載を防止するための相当な注意を尽くしていない、と主張するのではないかと思います。SMBC日興証券の金商法違反(相場操縦事件)についても、今後立件された場合には同様の疑問が生じるのではないかと。

つまり、株主代表訴訟や開示規制違反(金商法違反)に対する賠償請求訴訟が提起される前にこそ、会社自身が当時の取締役、監査役(現在は指名委員会等設置会社ですが、以前は監査役設置会社でした)に損害賠償を求めるべきではないでしょうか。ただ、一方において、法人としての日産が罰金刑を受けるに至った端緒は、当時の取締役、監査役の方々の頑張り(司法取引に応じることも含めて)によるところであり、その頑張りがなければ今回の立件すらなかったわけですから、いわば「功労者に対して現経営陣が弓を引く」ということが果たして妥当と言えるのかどうか。

両罰規定によって法人に多額の罰金が科される根拠というものが、いまひとつ理解できていないのですが、日本でも「金商法遵守に関するコンプライアンス・プログラム」のような平時からの経営者の取組みを(法人に罰金刑を課す際に)裁判所が評価する・斟酌する制度を採用したほうが、民事裁判への展開という意味においてはわかりやすいように思います。そのほうが役員の法的責任を考える際にも参考となる判断理由が明確になるような気がします。

| | コメント (3)

2022年3月 1日 (火)

BLOGOSが5月末をもって終了とのこと(しかし当ブログは続けます)

2009年以来、長きにわたってお世話になっておりましたLINEが運営する「BLOGOS」が、3月末をもって更新活動を終了し、5月末をもってサイトの公開も停止するそうです。ホントに、当ブログはBLOGOSでご覧になっておられる方が圧倒的に多いので、かなりショックであります。

ブログという媒体も、かなりの年月を経て発信力が低下していることは否めません(アルファブロガーに選出していただいた時期がなつかしい)。ブログを集めてプラットフォーム(キュレーション?)としての広告効果にも限界が来た、ということなのでしょうね。しかし本当にお世話になりました。

なお、こんなご時世ではありますが、当ブログは(元気の続く限り)法務関連の話題を提供すべく更新を続けてまいります。これまでBLOGOSでご覧になっておられた方も、これからはこちらのアドレスを「お気に入り」に登録していただければ幸いです。_(._.)_引き続き、よろしくお願いいたします。

| | コメント (1)

« 2022年2月 | トップページ | 2022年4月 »