今後注目すべき「法人処罰」に関連する2つの論点
ひさしぶりの更新です。といってもあまり時間がないので要点のみですが。
3月22日の日経ニュースでは、SMBC日興証券が金商法違反(相場操縦罪)で立件される見込みであることが報じられています。先日の日産自動車の法人処罰(罰金2億円)を認めた裁判とともに、今後の展開が注目されます。
3月7日に「日産自動車・金商法違反事件-法人処罰と役員の法的責任」なるエントリーを書きましたが、甲南大学の梅本先生に「法人に対する罰金・課徴金と役員等の損害賠償責任-オリンパス事件判決を手がかりとして-」と題する高橋教授(京都大学)のご論稿があることを教えていただきました(どうもありがとうございます!)。なるほど、法人に課される課徴金や罰金について、これを法人の損害として会社役員に賠償請求できるかどうか、ということは研究者の間でも議論されているのですね。たいへん興味深い論稿です。
そしてもうひとつ、法人処罰との関係で興味深い論点は(企業の内部統制システムとしての)コンプライアンス・プログラムの導入です。もしコンプライアンス・プログラムを導入して実践していれば、不幸にして法人が起訴された場合にどのような法的効果が発生するか、という論点です。日本ではまだ裁判上の効果があまり議論されていませんが、課徴金や罰金に裁量の余地があるかぎりは、処罰が軽減されることにつながり、また役員の損害賠償責任を基礎付ける根拠事実の認定にも影響が出てくるのではないかと思います。私個人としては、法的な理屈の上で問題はあるものの、実務的に検討するだけの価値はあると考えています。
このあたりは、もう少し時間に余裕がでてきたときに、日本企業における内部統制の議論の深化のひとつとして詳しくお話したいところですが、とりあえず「頭出し」程度で失礼します。
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コメント
「SMBC日興副社長を逮捕 相場操縦に関与疑い、特捜部」
と、24日の夕方の報道に触れました。
…SMBC日興証券の幹部ら4人が金融商品取引法違反(相場操縦)容疑で逮捕された事件で、東京地検特捜部は24日、別銘柄の不正な株取引に関与した疑いが強まったとして、同法違反容疑で、幹部らが所属していた「エクイティ本部」などを統括する副社長の佐藤俊弘容疑者(59)を逮捕した。特捜部は法人としての同社と幹部らを起訴する方針を固めており、事件の全容解明を目指す。…とのこと。
逮捕された佐藤容疑者は、任意の聴取に事件への関与を否定していた。…とも。
ロシアのウクライナ侵攻関連報道が主流のメディア展開が無ければ、上記のニュースはどれだけの重みで取り上げられていたでしょう。
否、過去形ではなく、今後の報道各社のバランスの取れた情報発信を願いたいものです・・・。
投稿: にこらうす | 2022年3月24日 (木) 18時35分