投資家派遣の社外取締役と、独立社外取締役とのコミュニケーション
本日(3月7日)の日経朝刊では「役員に投資家、統治強化へ 利益相反など課題に-米国発『ボード3.0』」なる見出しで、日本企業でも長期投資家を社外取締役に迎え、取締役会の情報収集力やアクティビストとの交渉力などを高める取り組み、いわゆる米国発の「ボード3.0」と呼ばれる動きが注目されていることが報じられています。最近、世間の流れに追いついていないので初めて知りましたが(^^;)、ボード3.0の考え方は、今年6月のCGSガイドラインの改訂に盛り込まれる可能性があるそうです。
私が世話人を務めております社外役員の自主研究会の会合(3月5日)でも、社外取締役間におけるコミュニケーションの在り方がテーマでして、「大株主から派遣されてきた社外取締役さんにはどこまで重要な議論に参加してもらうか」ということが問題になっておりました。これだけ取締役会に社外取締役が増えてきますと、重要案件の成否は社外取締役の議決権行使にかかってくるわけで、社外取締役間で取締役会直前に開催する「社外役員連絡会」の審議内容に、大株主から派遣されてきた方も加えてよいか、という問題です。
上記記事にもあるように、機関投資家等の大株主出身の方は一般株主との間で利益相反の関係になるので、フェアーディスクロージャールールに従って、社外役員間の協議にはご遠慮願うのが筋なのでしょうね。もちろん「私は監督者として職務を行うのであり、利益相反を疑われるような行動はしない」「会社側でチャイニーズウォールを敷いているから心配ご無用」との意見もあるかもしれません。しかし、今回のSMBC日興証券のように、プロ中のプロでもチャイニーズウォールに穴があくような事態もあるわけですから、ここは「外からどう見えるか」という判断基準で対応したほうが(少なくとも独立社外取締役の立場からは)無難のような気がします。
以前、私が社外取締役を務めておりました某上場会社では、大株主から派遣されていた社外取締役の方もおられましたが、このあたりはきちんと理解しておられて「本日は、私は社外役員連絡会には参加しないほうが良いと思いますので欠席します」と自ら申し出ておられました。「独立性」や「利益相反」という問題は、とても曖昧な概念なので、問題に直面した際の「気づき」が大切ではないかと思います。
ちなみに当ブログでは再三申し上げておりますが「非常勤取締役」のほうが企業価値向上には寄与すると私は思っております(業務執行を行う社外取締役、つまり会社法上の社外取締役ではない非常勤役員です)。「一緒にリスクを背負う社外役員」だからこそ社長は意見を尊重し、事実上の監督機能も果たせると思うのですが、あまり話題にならないですね(笑)
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コメント
先生の「非常勤取締役」という概念には、はっといたしました。特にBoard 3.0を提唱した論文を読むと、Empowered Directorなる人物が登場するのですが、これはExecutive Director(≒業務執行取締役)なのか、Independent Director(≒独立社外取締役=非執行)なのか、やや不明瞭でした。そのうえで、戦略検証委員会を設け、そこでファンドのリソースを用いて戦略を考えるとなると、もはや「執行」なのではないのかという疑問がわいてまいりました。もちろん、戦略をモニターするという文章になっており、ゼロから立案するわけではないことが示唆されているのですが、厳密に考えるとどういう立場なのか。これはまさに執行側に非常勤取締役を置くというご発想に近いのかと思いました。ただ、そうなると、その方をCEOや社長にしてしまえばよいのではないかという究極的な考え方もあるのかなと思いました。むろん、会社の規模感やステージにも依るというのはそうなのですが。あとはエージェンシーコストがファンドが取締役を送り込むよりも割安であるかが、送りてのファンドにとっては大事なのかと思いました。
とりとめもない駄文失礼いたしました。
投稿: カレリア | 2022年3月 9日 (水) 09時02分