不祥事の再発防止は「予防型」か「発見・危機対応型」か-選択に関する若干の私見
最近は大きな会社で不祥事が発覚しますと、調査委員会が設置されて数か月後に委員会報告書が公表されます。不祥事が発生した様々な要因が特定されて、そこから再発防止策が提言されるのですが、その中身については委員会側と会社側で揉めることがありますよね。当然かもしれませんが、不祥事を発生させた会社側としては「また起きることを前提として」というのは「縁起でもない」と思われることでしょう。
ただ先日も、大きな自動車メーカーさんの品質不正案件について、報告書が公表された後に再び同様の不正が発覚して、とても気まずい状況となりました(国交省の信頼を失ったことはきわめて厳しいです)。だから、といってはなんですが、私はやはり予防型よりも発見・危機対応型の再発防止策をお勧めしますね。ということで、全社的リスクマネジメントの視点から、以下のように比較をしてみました(図面をクリックしていただくと、図表の内容が明確にご覧いただけます)。
結論から申し上げますと、私は「発見、危機対応型」の再発防止策を優先的に提言したいです。法務、総務、経理、監査等の管理部門が失敗をおそれずに声を上げることが組織としてのコンプライアンス体質を向上させますし(失敗も資産となる)、ステークホルダーは不正を起こさないことよりも、起きたときの不正に対する前向きな姿勢にこそ「安心」を求めるからです。また、不正リスクを承知のうえで、あえて重要な新規事業に投資をする際にも、右側のほうがリスクマネジメントのツールとして実効性が高まるものと思います。
ただし、右側だと平時から具体的な不正リスクの発生可能性や発生頻度を議論しますので、いろいろと現場での軋轢が生じます。その軋轢を少しずつ和らげることもまたカルチャーの改革に向けた経営陣の仕事ですね。コアバリューとか、ミッション等、貴社にとって一番大切なものを現場の社員の皆様に理解していただく絶好の機会です。