« 五輪汚職-KADOKAWAになくて講談社にあったもの | トップページ | 不祥事の再発防止は「予防型」か「発見・危機対応型」か-選択に関する若干の私見 »

2022年11月15日 (火)

無形資産と言われる「組織風土」と「心理的安全性」について考える

企業の持続的な成長を見極めるにあたり、機関投資家の人たちは、なぜ「組織風土」とか「カルチャー」を無形資産として評価対象にしたいのでしょうか。いろいろと考えたのですが、要は経営者の戦略構想とか誠実性が組織全体に伝わるかどうか・・・というところのモノサシになる、ということだと(現時点では)理解しています。しかしどうやって評価するのでしょうかね?

そういえばCOSO「全社的リスクマネジメント:戦略およびパフォーマンスとの統合」(2017年9月公表)の日本監訳版のなかで、監訳者の方が「日本の『組織風土』と本フレームワークの『カルチャー』とは微妙に意味合いが異なるので、別の日本語には訳さずにそのまま『カルチャー』と記した」との解説がありました。

そもそも心理学者の名著「木を見る西洋人 森を見る東洋人」や「ボスだけを見る欧米人 みんなの顔までみる日本人」でも語られていますが、経営者の思いがどのように組織に伝わるか・・・ということに関心を持つのであれば、その伝わり方は(経営者と従業員との関係において)日本と欧米では異なっていても不思議ではないですね。経営者が変われば「カルチャー」も変わるかもしれませんが、日本の「組織風土」は(経営者が変わっても空気が変わらなければ)変わらないのかもしれません。

そのように考えると、なるほど「組織風土」と「カルチャー」は微妙にニュアンスが違うというのも納得します。日本の経営者は従業員に腹落ちするような言葉で自らの戦略構想を伝えるか、もしくは「忖度」や「現場の空気」を用いて伝えるか、自らの思いを組織に浸透させるためには工夫が必要ではないかと。

同じ文脈で考えると、最近話題の「心理的安全性」なる言葉にも注意が必要だと思います。「心理的安全性」を語るときによく引用されるエイミー・エドモンドソン「恐れのない組織-心理的安全性が学習・イノベーション・成長をもたらす」の中で、心理的安全性とは「安心して喧嘩ができる環境」とあります。でも日本人は「心理的安全性」と聞くと、上司と安心して論争ができる環境と捉えることができるでしょうか。

日本ではどちらかというと「イノベーションのための組織作り」よりも「ハラスメントのない職場環境」という意味で使われていないでしょうかね。どうも日本の組織風土に合わせて都合の良いように言葉が独り歩きするような気がします。

 

|

« 五輪汚職-KADOKAWAになくて講談社にあったもの | トップページ | 不祥事の再発防止は「予防型」か「発見・危機対応型」か-選択に関する若干の私見 »

コメント

 長期間に亘る某社某委員会のお仕事から復帰され、再び先生のブログを拝読できますことに感謝申し上げます。

 「心理的安全性」はその某社で、痛感なさったのではないかと、もう一つの委員会報告書も読みながら、拝察致します。組織の中で心理的安全性を保つのは、その組織の規模の大小を問わず、言うは易く行うは難いことだと思います。しかしそう決めつけると、イノベーションなど起こしようが無くなります。心理的なセーフティネットで守られた限られた空間、例えばワークショップを繰り返し行うことで、組織メンバーが心理的安全性を体験し、それを生み出すための自分なりの方法を身に着けてもらうという、迂遠な方法が、却って心理的安全性を根付かせるための近道のような気がします。"One size not fit all "…ということで。

 組織風土と、カルチャー(組織文化)ですが。社会心理学者・岡本浩一先生の「属人思考の心理学」によれば、次のように説明されます。「組織風土とは、その組織の持つ『雰囲気』のことである。もう少し説明を加えれば、その組織に所属する者が、組織の性格を『どのように見て、どのように理解しているか』といった、組織メンバー全体の認識である。ちなみに、組織文化という場合には、より広く、組織の客観的・物理的な側面と組織メンバーの主観的・価値的な側面の両方を合わせて指すことが多い。 (中略) 組織風土が『無意図的に形成されたもの』であるのに対し、組織文化は『意図的に確立すべきもの』といったニュアンスがある。」(岡本浩一・鎌田晶子「属人思考の心理学 組織風土改善の社会技術」新曜社 2006年 より引用)

 このような考え方からすれば、経営者が目指す組織文化を示し(その目的と具体的な目標で)、適切な方法(社員が自分ごととしてとらえることのできるやり方)で働きかければ、カルチャーは変えることができます。が一方、組織風土はそれだけでは変わりにくいと言えます。仮に、「ものを言えない風土」があると、メンバーが感じている組織がこの世にあるとしますと。先輩や上長に自分の考えを伝え、それが許容され、周囲からの支援が得られ、その結果として何かの役に立ち、それを評価された、という経験を積み重ねることで、少しずつ全体の組織風土が変わっていくのではないかと考えます。これまた気の遠くなる道ですが、どこかで諦めれば、早晩その組織は再びダークサイドに戻ることになるでしょう。一人一人の小さなワンステップが、重要ではないかと。地味で、世間受けはしないでしょうけど。

投稿: コンプライ堂 | 2022年11月16日 (水) 09時27分

>日本ではどちらかというと「イノベーションのための組織作>り」よりも「ハラスメントのない職場環境」という意味で使>われていないでしょうかね。どうも日本の組織風土に合わせ>て都合の良いように言葉が独り歩きするような気がします。

まじで言う通りだと思いました。
気づきを得ました。ありがとうございました。

投稿: unknown1 | 2022年11月16日 (水) 13時29分

コンプライ堂さん、コメントありがとうございます。組織風土と組織文化の違い、有識者の見解について参考にさせていただきます。
unknown1さん、少しでもご参考になれば幸いです。

引き続きよろしくお願いいたします。

投稿: toshi | 2022年11月16日 (水) 21時11分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 五輪汚職-KADOKAWAになくて講談社にあったもの | トップページ | 不祥事の再発防止は「予防型」か「発見・危機対応型」か-選択に関する若干の私見 »