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2022年12月29日 (木)

皆様、よいお年をお迎えください。

全国的にコロナ感染が増加傾向にある中、皆様いかがお過ごしでしょうか。ブログの更新が滞っておりますが、私はあいからわず元気にしております。

今年は1月から10月20日まで、三菱電機のガバナンスレビュー委員会(委員長)の仕事に没頭し、その後は少し休息の時間があり「ブログ再開します!」と申し上げておりましたが、12月8日よりアイ・アールジャパンの第三者委員会(委員長)の仕事が始まり、ふたたび忙しい毎日となりました。年末年始も関係者提出記録の読み込みや報告書に記載すべき論点提起(構想)、フォレンジックやヒアリング方針の検討など、委員会チームの皆さんとがんばっております(この時期にほかの法律事務所の若い先生方に働いてもらうのはちょっと気がひけるのですが・・・)。ただ、社会的に関心の高い事案なので責任重大です。

大仕事と並行して、すこしだけ大規模会社のガバナンス支援の作業をしています。長年、同じ会社(同じ組織?)のガバナンス改革を支援していると、社内のどのような力学によって組織風土が変わり得るのか、ようやく自分なりにわかるようになってきました。様々な抵抗勢力との交渉によって「オトシドコロ」を探り、ときにはイジメられ(還暦を超えたオッサンには結構ツライ)、(会社には申し訳ないが)恥ずかしい失敗を繰り返して初めて理解・体得できることがあります。おそらく来年は(日本企業にとって)ガバナンス改革の正念場に差し掛かるはずなので、またブログの更新ができるようになればお話したいと思います。もちろんあくまでも個人的な意見ですが。

ちなみに「個人的意見」を総論的に述べるならば、この10年の「日本株式会社の価値向上」に向けたガバナンス改革は失敗が見えてくるはずです。ただし、その失敗の経験は個々の企業にとっては「無形資産」になるはずなので※、その無形資産を個々の企業がどのように活用できるか・・・、そこが来年以降の重要課題であり、だからこそガバナンス改革は正念場を迎えることになるだろう、と考えます。

※個々の企業にとって失敗が「無形資産」になりうるためには、これまで「ガバナンス・コード」に熱心に取組めば企業価値は向上する、持続的成長につながると信じて創意工夫してきたこと、あるいは「うちの会社は対応しない」ということでエクスプレインしてきたことが前提です。最初から「なんちゃってコンプライ」ということで、担当役員マターで対応してきた企業にとっては「経費の無駄使い」で終わることになるでしょう。

今年も(チラッとでも)当ブログをお読みいただき、ありがとうございました。諸事情により更新がままならず申し訳ありませんでした。来年もどうか当ブログをよろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。

12月29日 山口利昭 拝

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2022年12月 9日 (金)

アイ・アールジャパンHDの設置した第三者委員会の委員長に就任いたしました。

11月14日付けにて、株式会社アイ・アールジャパンホールディングスが公表しておりました「第三者委員会設置に関するお知らせ (ダイヤモンド・オンラインの報道を受けた当社元役員に関する追加調査の実施について) 」を受けて、本日設置されました第三者委員会の委員長に就任いたしました。詳細につきましては「開示事項の経過-第三者委員会委員の決定、委嘱事項(調査の対象・範囲)及び調査結果の開示時期に関するお知らせ」をご参照ください。

すでに経済紙で報じられているとおり、当委員会に委嘱された調査はきわめて重い任務であり(日弁連ガイドラインに準拠した委員会活動が必要)、活動期間もそれほど長くないことから、今後はこちらの職務に専心してまいります。 三菱電機の委員会活動が終了して「ようやくブログ再開!」と思っておりましたが、また一時休止となるかもしれません。本日開催された企業会計審議会(内部統制部会)での改訂案のお話など、ブログで書きたいネタはありますが、もう少しお待ちください。

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2022年12月 2日 (金)

内部通報制度のメリットを社長に理解してもらう

改正公益通報者保護法が施行されて、多くの会社で内部通報制度の見直しが行われているようです。私も時々見直しのお手伝いをすることがありますが、経営トップが見直しに積極的というわけではなく、それほど見直しのための人的・物的資源が投資されているようでもなさそうです。

ただ、先日の日本製鋼さんの長年の検査不正も内部通報が端緒だったことが報じられています。「犯人探しされそう」「通報して報復されそう」という社員の意識がなかなか根強いので、通報件数を増やすにも多くの投資が必要です。「ウチの会社ではそもそも不祥事は起きそうにないけど、それって優先順位高い案件なの?」というのが社長のホンネですよね。

そこで、私が考えている「社長に理解してもらう内部通報制度のメリット」を以下に示しておきます。きょうも、某会議において、大きな会社の社長さんからこの説明について関心をもってご質問をいただきました。おそらく一番目のメリットは「不正はかならず起きる」という前提でのメリットですが(これはなかなか社長には響かない)、二番目、三番目のメリットは「不正は起こしてはいけない」という経営トップのコンプライアンス意識に合致するところが大きいのでしょうね。

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もちろん、一番のメリット(通報制度の本来の趣旨)は「不正の早期発見」ですが、これはまず「組織風土改革」が前提となりますので、そんなに簡単に結果が出るものではありません。むしろ内部通報の件数が増えることで効果的なのが二番目と三番目のメリットです。「犯人探しのおそれ」や「不利益処分のおそれ」というのは「不正行為の当事者による通報」が当たり前の時代の産物ですが、私の設計は「通報したことによる心理的不安の少ない第三者(目撃者)による通報の促進」というところに力点を置き、通報件数をとりあえず増やします。

件数が増えるとそれなりに弊害もありますが、(件数急増は)職場にはかなりの衝撃を与えるため、まずは上司・部下のレポートラインが正常化される可能性が高くなります。つまり悪い情報も、ありのままに上司に伝わるということです(これが「レポートラインの健全化」)。

そしてもうひとつが「件数は増えたけど、そもそもたいした案件は増えないよね」という課題です。たしかにそのとおりなのですが、本当に件数が増えると、その「たいしたことがない案件」がある部署に固まって発生していたり、「うわさ程度の案件」があるグループ会社に集中している傾向が読み取れるようになります。これが効率的な監査によって「不正の芽」を発見する、ハラスメントの元凶を特定する、といった結果につながります。あくまでも「不正予防のための健康診断です」という表現が大切です。

このような結果は通報制度を運用する担当者の努力に依拠するところも大きいのですが、まずは社長自身が率先して通報制度の運用に前向きであることを示す必要があり、それは単なる宣言ではなく、予算を伴う見直しでなければ現場は信用しません。ぜひ皆様の会社でも、経営トップを説得する際の参考として活用してみてください。

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