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2022年12月 2日 (金)

内部通報制度のメリットを社長に理解してもらう

改正公益通報者保護法が施行されて、多くの会社で内部通報制度の見直しが行われているようです。私も時々見直しのお手伝いをすることがありますが、経営トップが見直しに積極的というわけではなく、それほど見直しのための人的・物的資源が投資されているようでもなさそうです。

ただ、先日の日本製鋼さんの長年の検査不正も内部通報が端緒だったことが報じられています。「犯人探しされそう」「通報して報復されそう」という社員の意識がなかなか根強いので、通報件数を増やすにも多くの投資が必要です。「ウチの会社ではそもそも不祥事は起きそうにないけど、それって優先順位高い案件なの?」というのが社長のホンネですよね。

そこで、私が考えている「社長に理解してもらう内部通報制度のメリット」を以下に示しておきます。きょうも、某会議において、大きな会社の社長さんからこの説明について関心をもってご質問をいただきました。おそらく一番目のメリットは「不正はかならず起きる」という前提でのメリットですが(これはなかなか社長には響かない)、二番目、三番目のメリットは「不正は起こしてはいけない」という経営トップのコンプライアンス意識に合致するところが大きいのでしょうね。

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もちろん、一番のメリット(通報制度の本来の趣旨)は「不正の早期発見」ですが、これはまず「組織風土改革」が前提となりますので、そんなに簡単に結果が出るものではありません。むしろ内部通報の件数が増えることで効果的なのが二番目と三番目のメリットです。「犯人探しのおそれ」や「不利益処分のおそれ」というのは「不正行為の当事者による通報」が当たり前の時代の産物ですが、私の設計は「通報したことによる心理的不安の少ない第三者(目撃者)による通報の促進」というところに力点を置き、通報件数をとりあえず増やします。

件数が増えるとそれなりに弊害もありますが、(件数急増は)職場にはかなりの衝撃を与えるため、まずは上司・部下のレポートラインが正常化される可能性が高くなります。つまり悪い情報も、ありのままに上司に伝わるということです(これが「レポートラインの健全化」)。

そしてもうひとつが「件数は増えたけど、そもそもたいした案件は増えないよね」という課題です。たしかにそのとおりなのですが、本当に件数が増えると、その「たいしたことがない案件」がある部署に固まって発生していたり、「うわさ程度の案件」があるグループ会社に集中している傾向が読み取れるようになります。これが効率的な監査によって「不正の芽」を発見する、ハラスメントの元凶を特定する、といった結果につながります。あくまでも「不正予防のための健康診断です」という表現が大切です。

このような結果は通報制度を運用する担当者の努力に依拠するところも大きいのですが、まずは社長自身が率先して通報制度の運用に前向きであることを示す必要があり、それは単なる宣言ではなく、予算を伴う見直しでなければ現場は信用しません。ぜひ皆様の会社でも、経営トップを説得する際の参考として活用してみてください。

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