日産「不平等条約」解消と社外取締役の果たすべき役割
週間東洋経済の最新号(2023年3月25日号)のニュース最前線「日産『不平等条約』解消も交渉過程で乱れた足並み」を読みました。いや実におもしろい記事です。
このたびの日産・ルノーの出資見直し、新規事業への協働の件について、私は1999年の救済出資以降続いてきたルノーとの不平等条約問題が、元会長逮捕劇による紆余曲折を経て、このたび双方の合意により対等関係に至った、まさに「めでたしめでたし」のストーリーで終わったものと認識しておりました。しかし、上記記事を読むと、不平等条約解消に向けて経営執行部と5名の社外取締役との足並みがそろわず、解消話はあわやご破算のリスクを抱えていたそうです。
詳細は上記記事をお読みいただきたいのですが(東洋経済オンラインでは現時点ではアップされていないようです)、社外取締役のメンバーらは(ルノーの大株主である)フランス政府の出方が見えないことや、ルノーとの共同事業への参画による知的財産権侵害のリスクを理由として、不平等条約に向けた合意条件には難色を示していたそうです。
さらに記事によりますと、一部の社外取締役の方は、経営執行部を通さずに直接ルノーのCEOと連絡をとり、フランス政府の動向に関する情報を取得していた、とのこと。記事では「最終的には話がまとまったが、もしこじれていたらどうなったか」と社外取締役の行動を批判する幹部もおられたようです(ただし、フランス政府も最終的にはルメール経済財政大臣が「両社の交渉を支持する」旨の書簡を西村経済産業担当大臣に送付されました)。
上記記事の内容が事実だとすれば、この不平等条約解消の一連の経過は日本の社外取締役に期待された役割を考えるにあたって、多くの教訓を含むものです。ぜひ、現役の社外取締役、社外監査役の皆様も「自分だったらどのような行動に出るだろうか」と考えてみてはいかがでしょうか。たとえば・・・
①社外取締役の役割は企業の不正や不祥事がないように監視することが主たるもので、重大な経営判断は経営執行部に委ねるべきか(モニタリングモデルにおける「モニタリング」の意味は?)
②もし経営執行部の判断に納得がいかない場合、社外取締役は他の社外取締役と協議をしながら、自ら対外的な交渉の場に立つべきか(会社法上の業務執行に該当する?)
③あるいは経営執行部の判断に納得がいかないのであれば、社外取締役が多数を占める指名委員会で代表取締役を解職すべきか(そのような事態のための「サクセッションプラン」は?)
④重要な経営判断において、経営執行部の判断を否定することではなく、軌道修正をするために対立することは、そもそも社外取締役の役割ではないか(「健全なリスクテイク」の意味は?)
⑤ガバナンス・コードに実質的にコンプライすることを選択するのであれば、そもそも社内の経営が一時的に混乱することも「望ましい副作用」として機関投資家は許容すべきではないのか
等、様々な疑問が浮かんできます。みなさん、日産の企業価値向上を願う気持ちは同じだと思います。上記記事を題材として、ぜひ社外取締役に就任されている方々のご意見をお聴きしてみたいですね。
| 固定リンク
コメント