社外取締役・監査役と機関投資家との対話内容を開示せよ
金融庁の井上審議官のロイターインタビュー記事を読んでおりまして、ガバナンス改革の方向性として、私が当ブログ(たとえばこちらの記事とかこちらの記事)で5年前から述べている「ポピュレーション・アプローチからハイリスク・アプローチへの移行」が、いよいよ現実味を帯びてきたのではないかと期待をしております。
第二次安倍内閣のもとで日本再興戦略が策定されて丸10年。その「1丁目1番地」とされたガバナンス改革が施行されて丸9年が経過します。改革によって上場会社の株式価値は上がったかもしれませんが、企業価値は上がったのでしょうかね?制度対応は「なんちゃってガバナンス」に終始している企業が多いので、あまり効果は上がっていないようですね。
社外取締役を増やしても、任意の指名報酬委員会を設置しても、さらに監査等委員会設置会社に移行したとしても、もはや「ガバナンスの深化」は限界です。ただガバナンス改革は「終わりのない旅」だそうですから(前記・井上審議官)、自民党・金融調査会でも4月中旬に金融庁が策定予定である「アクションプログラム」を機に議論がなされるそうですね。
各社が「中計の見直し」で言い訳としている「新型コロナウイルスの影響」「ウクライナ情勢」「経済安保によるサプライチェーンの分断」「想定外の円安傾向」とガバナンス改革実施との関係についても検証された形跡はほとんどないですね(つまりリスクマネジメントの面においてもガバナンス改革は実効性がない?)。ということで、これからのガバナンス改革には、どうしても機関投資家の皆様のご尽力が必要です。機関投資家の皆様が活躍できる環境整備、おそらくハードローの面でも、ソフトローの面でも、開示促進、対話促進、協調行動促進の流れが大きく進むはずです(前記・自民党調査会でも有報の総会前提出が論点に上がっているのも当然の流れでしょうね)。
そして社外取締役や監査役の能力評価、研修促進という要請を効率的に高めるに、個人的な意見ではありますが「社外取締役・監査役と機関投資家との対話の有無、対話内容の開示」を提案したいと思います。私自身は社外取締役として国内・海外の機関投資家と対話した経験はわずか3回しかありませんが(海外の投資家とは同時通訳付きで)たいへん勉強になりましたし、是々非々の議論は投資家サイドにも参考になったのではないかと思います。また、議決権を持たない監査役さんが、経営判断にどのような影響を及ぼしているのか、知ることも貴重ではないかと。
わざわざ「取締役会改革3.0(社外取締役を通じた株主による経営関与)」などと言わなくても、目の前の社外取締役が機関投資家と同じ方向を向いているのか、それとも社長の顔色だけを窺っているのか、お茶を濁す物言いに終始するのはなぜか(単に知らない?fair disclosure?複雑な社内力学への配慮?)、いろいろと投資家が理解する良い機会でもあります。社外取締役との意見交換を通して機会損失を回避できるかもしれません。スキルマトリクスの開示よりも開示情報としては価値があり、また社外取締役の資質向上の機会にもなり「一石二鳥」だと思います。
| 固定リンク
コメント