もう少し話題になってもいいのでは?-ファミマTOB価格・東京地裁決定事案
3月31日のBloombergnews「ファミマTOB『安過ぎた』と認定、適正価格より300円-地裁」を読みました。伊藤忠商事が2020年に実施した子会社ファミリーマートに対する株式公開買い付け(TOB)に関連して、米アクティビストのRMBキャピタルなどがTOB価格は「安過ぎる」として公正価格の決定を求めた裁判で、東京地方裁判所が、適正水準より300円安かったとの判断を示していたことが31日までに分かった、とのことです(2020年7月の公開買い付けに関する伊藤忠側のリリースはこちらです。ファミマの特別調査委員会の動きも辿ることができます)。
この東京地裁決定(価格決定申立事件)、関係者でもない限り決定文を入手することは困難ですが、ぜひとも目を通したいですね。実は私も同じような状況で某社(親会社が50.1%の株式を保有している子会社)の社外取締役として、三角株式交換における交換比率の適正性を判断するために設置された特別調査委員会の委員長をしておりました。一部株主より価格決定申立がなされ、最高裁まで審理が係属しました(最終決着まで約4年を要しました)。判断プロセスが公正であるとして、最終的には我々の出した価格(交換比率)が適正との決定をもらいましたが、このような事案をみるとゾッとしますね。我々のケースでは親会社側と価格交渉の末、なんとか交換比率については合意できました。
本件では伊藤忠側とファミマ特別調査委員会の間で、価格は折り合いがつかなかったようです。ということでファミマとしては「伊藤忠のTOBには賛同するが、当社株主に対して応募推奨はしない」という意見を表明しています。なるほど、裁判所で「結果的には安すぎる」という判断が下された際に、関係者の善管注意義務違反を問われるリスクを回避するためにこのような意見表明に至ったのですね(プロセスとしてMoM-マジョリティ・オブ・マイノリティ-を問う趣旨もあろうかと)。
しかし親会社との間で価格的に折り合いがつかない(少なくとも特別調査委員会レベルで)場合は取引条件に関する合意を得たとは言えないようにも思えます。特別調査委員会の意見を前提としたとしても、取締役会としては親会社TOBに賛同する、という意見はどうなんでしょうかね?(特別調査委員会の委託した価値算定アドバイザーのレンジをも下回る価格でのTOBについて、応じなければファミマの喫緊の信用状況に疑義が生じるような状況でもないところで「賛同」できるものなのでしょうか?)会社から「一般株主の皆様は自己責任でTOBに応じるかどうか判断してください」と言われて、株主の皆様は納得できるものなのでしょうか?最後まで裁判で争った株主には差額は支払われますが、TOBに素直に応じた株主の方々は結果的には適正価格以下で株式を手放したことになり、なんら差額が支払われることはありません。
このあたり、いろんな有識者の方々のご意見を拝聴したいところですが、そもそも法律雑誌等で話題になるのでしょうか?このような事案においては社外取締役が中心的な役割を果たすことになるわけですが、なんかあまり話題に上っていないような気もしております( ;∀;)。
ps 以上のようなエントリーをアップしたところ、4月3日の日経ニュースで本件が取り上げられていました。日経記事によると、
東京地裁は市場株価やプレミアムなどを総合的に考慮したうえで、買い取り価格は2600円が公正と決定。ファミマはTOBにあたり一般株主の利益を確保するために特別委員会を設置したが、東京地裁は「一般株主にできる限り有利な取引条件の獲得に向けた検討・交渉を行うという手続きは遂行されなかったと言わざるを得ない」と決定文で言及した。
とのこと。うーーん、やっぱり決定文を読みたい。特別調査委員会のプロセスについても疑問視されており、社外取締役も受難の時代になったのかも。。。
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コメント
山口先生 おはようございます。タグと違う話題になり申し訳ありません。4月3日付け日テレNEWSでは、公正取引委員会が電力会社4社へ1000億円超の課徴金の納付を命じ、経産省は関連会社にも補助金の交付停止や入札指名停止を行なったとありました。歪めたれた経済活動の中で従業員は「やり放題の職場」でだんまりです。度重なる電力価格値上げの中で、その不必要な支出は消費者への不利益として電力価格に少なからず影響を受けてしまうのでしょうか。不正な行為を組織内と同業他社とでつるむ行為を許せないと感じている社員がいれば3億円程度の情報提供料としてお支払いする制度もありかなと思えてきました。物言う株主や助言会社などと、どのような形でコラボできれば「実効性のある」歪められない「経済活動」が行われるのでしょうか。どちらかのバラエティ番組で、(この話題に気づかれれば)コロナ禍で米国の大学でオンライン授業をなさっている新進気鋭の経済学者の方が番組内でお話しするのではないかと楽しみにしております(妄想しております)。
投稿: サンダース | 2023年4月 4日 (火) 05時51分
当時のTOBに関しては、ファミマもそうですが、近接して行われたさが美の買収でも色々あったようで、安東 泰志(ニューホライズンキャピタル 会長兼社長)は、色々起こっておられました。今検索して出てくるものは、穏やかなトーンですが・・・・
原文を読みたいですね。
投稿: Kazu | 2023年4月 5日 (水) 16時56分