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2023年4月20日 (木)

有事における監査役員の活躍は話題性に乏しくなったのか?

2005年4月から書き始めた当ブログ(最初はniftyのココログではなく、ドリコムでした)も、すでに開設から丸18年が経過しました。この18年の中で「モノ言う監査役」に関する話題を何度も提供し、有斐閣「ジュリスト増刊号」等の論稿でも、モノ言う監査役さんに関する事例を取り上げて、そのご活躍を奨励してきました。私自身も裁判手続きの内外で、常勤監査役、社外監査役の方々の支援をしておりました。しかし、最近は「モノ言う監査役さん」の話題はほとんどメディアにも登場しなくなったような気がしております(直近では2018年ころの日産社員から内部通報を受け取った同社監査役さんの件、2020年ころ、支配権争いの中で委員会としての独自意見を述べておられた天馬社の監査等委員会の件くらいでしょうか。。。)。それとも、いろいろと他にもあって、私がきちんと情報を入手できていないだけなのでしょうかね?

いつも拝読している甲南大学の梅本教授のブログにおいて、梅本先生は「フジテックの事例こそ監査役(監査役会)が意見を述べるべきではないか」「監査役に関心が向かないのはなぜなのか」とおっしゃっていますが、まさにその通りでして、関係者の関心が向けられている「関連当事者取引の妥当性」や役員報酬開示の問題は、まさに監査役会が中心となって調査すべき事項のように思われます。当然、有事における監査役(監査役会)の活動が期待されるところですが、なにゆえ監査役(監査役会)の意見もしくは行動が開示されないのか不思議でなりません。機関投資家が監査役には関心を示さないという現実はわかりますが、たとえ投資家の関心が示されなくても、監査役(監査役会)としての意見は開示されるべきではないかと。「監査役は何をしているのか!?」と世間から問われるたびに、なぜか悔しい気持ちになります。

今週号の経営財務(4月17日号)では、さきごろ開催された日本監査役協会の監査役全国会議の様子が紹介されています。そこではサステナビリティ経営への関心、内部監査と監査役監査との連携強化が話題になっています。しかし、近時の監査役員の存在感が失われつつあることへの危機意識を共有するような話題は出ていないようです。私から言わせてもらえば、サステナビリティ経営(平時のガバナンスを含む)について監査役が意見を述べることを学ぶのであれば、その前に有事における取締役会の機能不全の有無に関する意見を陳述する(開示する)、監査等委員会が個別取締役の人事や報酬についての独自の意見を述べる(総会で説明する)ことを学ぶほうが先ではないでしょうか。監査役員の存在意義は常に具体的な形として企業社会に発信を続ける必要があり、会計監査人も、何か財務報告上の懸念を抱いた際には、経理部や執行部よりも先に監査役員と懸念事項を共有すべきです。

いまこそ、監査役員を支援する団体が「有事における監査委員のガバナンス上での役割」に危機感を持たねばならないと考えます。2013年のガバナンス改革の進展とともに、監査等委員会を含めて「監査役員」の影が薄くなってしまいました。もし公表されている報告書等において「元気な監査役員さん」の活躍事例をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えていただければ幸いです(すいません、最近、適時開示をきちんと読めていないもので・・・)

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コメント

山口先生 おはようございます 2014年1月30日(木)にご投稿された記事を拝読いたしますと「あの時に抱いた熱い想い」を思い出します。監査役で「時代は変えられる」・・・のではないでしょうか?

投稿: サンダース | 2023年4月21日 (金) 05時55分

サンダースさん、ありがとうございます。「これは監査役(監査役員)しかできない特権だ!」というツールはないものでしょうかね?いろいろと思案しておりますが・・

投稿: toshi | 2023年4月21日 (金) 22時19分

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