« 第三者委員会-根本原因の解明と企業の「深い闇」 | トップページ | 全国の社外取締役必読!(その2)-SBI新生銀行TOB意見表明書 »

2023年5月12日 (金)

近ツリ「重い代償」-内部通報制度は機能しなかったのか?

東洋経済オンラインにて、近ツリ社のコロナ過大請求事件の重い代償についての記事(5月12日付け)が掲載されています。国民への信頼を裏切った事案として、業績にも影響があることが報じられています。

ちなみに4月の朝日新聞ニュースによりますと、市からの委託料を過大に請求していた事実は「3月下旬になり、『人数をごまかしている』という内容の匿名の通報が市に寄せられ」たことから発覚したそうです。推測になりますが、社員(グループ会社、下請会社を含む)からの情報提供(内部告発)によるものと思われます。

社員から不正を打ち明けられた支店長が黙認していた、という事実も重大ですが、そもそも不正に関与していた(見て見ぬふりをしていた)ことで苦悶していた社員の声を社内で受け止める制度は機能していなかったのでしょうか?パソナの案件が発覚した直後であり、地方自治体も各社に自主調査を要請していた時期でもあっただけに、ここで大手企業の自浄作用が機能していなかったという事実は極めて厳しい。

ご承知の方も多いと思いますが、昨年6月の公益通報者保護法の改正により、自治体への告発者の保護要件は緩和され、また行政機関には内部告発への対応体制整備義務が明記されました。さらに外部通報を業務として支援する弁護士やリスクコンサルタント事業者も増えています。このような状況で内部通報制度が機能せずに自治体への情報提供で不正が発覚した場合、レピュテーションリスクの毀損と経営陣の業務執行上の不備との因果関係が明らかとなるため、経営陣の責任問題にも発展する可能性があります。

本事案では、近ツリ社でなぜ内部通報制度が機能しなかったのか、自社においてその真因を詳細に調べることが喫緊の課題ではないでしょうか。

|

« 第三者委員会-根本原因の解明と企業の「深い闇」 | トップページ | 全国の社外取締役必読!(その2)-SBI新生銀行TOB意見表明書 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 第三者委員会-根本原因の解明と企業の「深い闇」 | トップページ | 全国の社外取締役必読!(その2)-SBI新生銀行TOB意見表明書 »