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2023年5月29日 (月)

東洋経済「内部通報の多い企業トップ100」を読んで

日経でも取り上げられていた「公正なM&Aの在り方指針(原案)」(株主総会後に正式な指針が公表されるようですが)についていろいろと書きたいことがありますが、さすがに私の置かれている立場でコメントするのはマズかろう・・・と思い、本日は東洋経済さんの「内部通報の多い企業トップ100」の記事について思うところを記しておきます。

この記事を読んで、さすがに「内部通報が多いということは不祥事が多い企業だ」と連想する人は(かつてはいましたが)少ないはず。むしろ内部通報への対応体制を熱心に構築している企業ほど多くなる、というのが現実的な見方です(もちろん、東洋経済の記事にもあるように、従業員100人あたりで何件か?といった比較がよろしいかと)。ちなみに私が社外取締役を務める会社は25位ということで、一昨年よりも昨年は通報件数が倍増しております。関係者のご尽力の賜物と思いますが、同業の積水ハウスさん、大和ハウスさんもなぜか倍増していますね。

いろいろな会社の対応体制構築の支援をしていて、この「倍増」という数字はフェーズ1の状況にあることを示しています。つまり良好な通報対応体制が構築できてくると、社内で通報が増えるという時期です。しかし、上記「トップ100」の記事を読むと、すでに横ばいもしくは微減の会社も結構あります。熱心な会社においては、これまで通報件数が増えてきたところで、かならず横ばいになる時期がやってきます。こうなりますと、今度は通報窓口担当者が「不誠実な通報」「勘違い通報」への対応で苦慮する時期となり、これがフェーズ2です。

最近は通報窓口の対応がマズイとなりますと「セカンドセクハラ」「セカンドパワハラ」として窓口担当者が訴えられるケースもありますのでとても悩みますよね。通報事実が「公益通報」に該当する場合には消費者庁による行政処分の対象になる可能性もあります。このフェーズ2の時期に、社内で通報処理の効率化を図る必要性が高まるのですが、ここでうまく効率化が図れる企業とそうでない企業に分かれます。思うに、この効率化の作業において社外有識者のお手伝いが必要となる場面が多いはず。

企業に人権DDの実践が求められ、また、海外では内部告発法の国内法化が進んでいる中で、現状の経営環境に合った内部通報の仕組みと運用が求められています。たとえば通報100件のうち1件でも(海外やグループ会社から)重要な通報事実が上がってくれば、これは通報制度を構築した意味があります。経営陣が喉から手が出るほどほしかった情報が通報によって上がってくることは、正直「運」によるところが大きいです。ただ、きちんと準備をしていた企業にしか「運」はめぐってこないというのもまた真実です。

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