全国の社外取締役必読!(その2)-SBI新生銀行TOB意見表明書
6月の定時株主総会の時期を前に「おまえ、そんなことしている場合か?自分の心配が先ではないのか?」とご批判を受けるかもしれませんが(^^;)、昨日リリースされました「支配株主であるSBI地銀ホールディングス株式会社による当行(株式会社SBI新生銀行)株式に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」はきわめて興味深いリリースです(このようなリリースは忙しくても、どうしても条件反射的に読んでしまうのです・・)。
とりわけ全国の上場会社の社外取締役さんにとっては必読ですね。先日、こちらのエントリーにて、伊藤忠・ファミマTOB案件の決定内容も必読と書きましたが、SBI新生銀行事案もぜひ「自分が社外役員だったらどうするか」検討してほしいと思います。TOBの対象会社であるSBI新生銀行側に設置された特別委員会を構成するのは同社3名の社外取締役と外部有識者1名です。2019年経産省「公正なM&Aの在り方に関する指針」に沿って、取引条件の公正性確保のためのプロセス、及び一般株主による判断に必要な情報開示の適正性を担保する措置が執られるわけですが、当該委員会の4名中1名が反対意見、もう1名が補足意見を述べておられます(その理由も開示されています)。さらに、対象会社の別の社外取締役(特別委員会の委員ではない方)は、当該TOBへの意見表明について(委員会報告を受けた取締役会において)反対意見を述べておられます(審議・決議に参加した取締役6名中、反対は1名。反対理由も開示されています)。
本事案特有の問題もありまして(国が保有する株式への処遇、公的資金返済の必要性)、一般株主保護はTOB価格の公正性だけでなく、株主平等原則への抵触問題(会社法違反か否か)にも配慮する必要があります。ということで、パッシブ運用が主流となった証券市場を前提に、MOM条件も合意されていない親会社のTOBにどのように社外取締役が決断するのか・・・、いやいや、委員は厳しい立場に置かれますよね。ましてや、先日の伊藤忠・ファミマの地裁決定が出ていますので、自身の責任問題も意識しながら対応しなければならない。なお、あえて個人的な感想で申し上げると、私は特別委員会で補足意見を述べておられるT社外取締役(弁護士)の意見にいちばん近いかなあ・・・と(株主平等原則に違反するかどうかはわからない、という結論を、一般株主と買収会社のどちらの負担と結びつけるか、という点はまだ悩んでおりますが)。
ぜひ多くの社外取締役の方々にも悩んでいただきたい事案です。価格の妥当性やどこに株主平等原則との関係で問題が生じるのか等、内容につきましては、また続編を書きたいと思います。なお、こういった事案の場合、どうしても従属会社側の社外取締役の対応に関心が向きがちですが、買収する側の上場会社の社外取締役にもプレッシャーがかかることに注意が必要です。近時は機関投資家から「資源の最適配分」への要望が強くなりましたので当然のことではありますが・・・
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