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2023年6月 2日 (金)

5月は企業不祥事発生時の調査委員会設置リリースが14件

主に不適切会計事案(粉飾、資金流出)ですが、5月は連休明けからの20日ほどの間で14件(1社で2件は1件と換算)の「調査委員会設置のお知らせ」が東証適時開示としてリリースされています。会計不正事案以外については調べきれていないので、もっと多いはず。およそ2日に1件以上の割合で会計不祥事が公表されているようです。時期的に監査が本格化して会計不正が発覚しやすいとはいえ、最近は不祥事発生のリリースによって株価が長期間低迷することも多いので、これだけ多いと投資家の方もたいへんですね。

2020年から21年にかけてのご相談案件の様子から「コロナ禍から3~5年で、たくさんの会計不正事件が発覚するだろう」と、当ブログでは何度も申し上げてきましたが(たとえば2021年のこちらのエントリー)、コロナで監査(内部監査、監査役等監査および会計監査)が傷んだ以上は当然の結果です。

私が第三者委員会の委員長を務めた案件でもそうでしたが、「リモート監査は思ったほど悪くない(監査として機能している)」との意識はあるものの、それは当事者の正常性バイアス(現状維持バイアス)による思い込みであり、不正行為の発見(もしくは予兆の発見)はリモート監査で発見できるほど甘いものではありません。疑惑を抱くことだけでも現地での「感覚」が必要なのに、ましてや「おかしい」と声を上げることができるほどの確信がどうしてリモート監査で可能となるのでしょうか。

おそらくこれからも(上場会社において)たくさんの会計不正事案が発覚するはずです。以前なら「これは不正だ」「いや、不正ではない」と上司と部下とで意見が分かれるような事案でも、働き方改革が進み、外部への情報提供に抵抗感がなくなりつつある時代背景では「会計不正疑惑の発覚」は時間の問題かと。正直に開示するか、大きなリスク(内部通報や内部告発によるレピュテーションリスク等)を覚悟のうえで「業績に重要な影響はない」として開示を控えるかは、皆様方のご判断次第です。ただ、私の希望としては、取引先や国税、会計監査人から指摘を受けてから公表するような最悪の事態だけは回避していただきたい。

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