トヨタグループの内部通報制度の本気度はいかに
この1年、トヨタグループの日野自動車、ダイハツ、豊田自動織機、愛知製鋼で大規模な品質不正・性能不正事案が発覚しました。これらの不祥事を受けて、トヨタ自動車はグループ会社・取引先220社、合計30万人にグループ内部通報制度を設置するそうです。「オールトヨタスピークアップ窓口」なる名称だそうです(たとえば日刊工業新聞ニュースはこちらです)。
品質不正や会計不正に関する通報が当該窓口に届いた場合には、トヨタ自動車サイドで調査を行うということですが、グループ会社としては覚悟しておかなければいけませんね。改正公益通報者保護法によって過料等の行政罰の対象となる事実も「公益通報対象事実」に該当するようになりましたので、グループ会社における品質不正もトヨタ自動車への通報は「内部公益通報」となる可能性が高いと思われます(トヨタ自動車が自ら他社の調査を行うにあたり、トヨタ自動車とグループ会社との取り決めがどのようになっているのか興味深いところです)。トヨタ自動車に不正が疑われる自社の問題を通報したとしても、またその「疑い」が真実でなかったとしても、当該通報社員は自社から不利益を受けない、ということになるのでしょう。もっと言えばトヨタ自動車はグループ会社社員の誰が通報したのか、その通報者の秘密を厳守することになると思います。
ここまで大規模な通報制度は、おそらく日本郵政グループの制度を超えて、日本で最も大きな窓口ということになるのでしょうね。イビデン最高裁判決の影響はトヨタ自動車グループ通報制度にも及ぶはずなので(ハラスメント案件と品質不正案件や会計不正案件とは異なりますが)、グループ会社や取引先の社員とトヨタ自動車との間で、通報対応義務が信義則上発生する可能性もあります。そのようなことは当然承知のうえで運用を開始するはずですから、トヨタ自動車として、グループ全体、いやサプライチェーン全体のコンプライアンス経営を推進する「本気度」が示されているようです。実際に運営されるとなれば、さまざまな課題も浮かび上がると思いますので、ぜひとも運営状況についても知りたいところです。
| 固定リンク
コメント
確かに、日本最大級でしょうね。
ただ、ディーラーで不正を内部通報したら実名が晒され,報復されたという事案で,弁護士が懲戒された事案がありました。
ディーラーとトヨタの資本関係はわかりませんが、グループ全体で通報者特定や不利益取扱いをどうやって排除するか、強い関心があります。
投稿: Kazu | 2023年7月 7日 (金) 21時21分