株式の流動性向上と株主提案の増加-空港施設、ツルハの事例に思う
社長の再任否決で揺れる空港施設社ですが、7月3日付けにて同社指名委員会の構成員を務める社外監査役の方が辞任されたそうです。「一身上の都合」とのことですが、私と同業者であり、またコンプライアンス経営にも詳しい方だったので、今回の再任否決劇についてはかなり悩まれたのではないでしょうか。5月9日付け「第三者委員会-根本原因の解明と『企業の深い闇』」では、第三者委員会の調査には「深い闇」の存在によって限界があることを述べましたが、今回も外部からは計り知れない深い闇が横たわっているのではないかと想像せずにはいられません。
さて、こういった事案に触れますと「ガバナンスの機能が発揮されなかったのではないか」と推察してしまうのですが、やはり安定株主が42%を保有しているという空港施設社の株主構成はいかんともしがたく、深い闇は闇のままでそのまま残り続けるのでしょうね(ちなみに5日に公表された臨時報告書によると、前社長の再任否決の比率は76%だったので、他の株主も社長再任否決は既定路線だったのかもしれません)。少数株主がどんなに頑張ってもガバナンス問題を改善するための提案が通るものではない、ということです。
たとえば8月に定時株主総会が開催されるツルハホールディングス社に対して、オアシスがガバナンス改善の提案をしています(たいへん長いですが、投資家向けのこちらのプレゼンは読みごたえがあります)。ツルハ社のケースでは、創業家の株式保有比率が8%程度であり、流動性の高い株式が多数存在することから、このような株主提案が熱心になされるものと思われます。空港施設社の事例、ツルハホールディングスの事例を比べますと、企業として株主を選べたらどんなに良いか・・・と経営陣が思うのも無理はないのでは。日本の上場会社のトレンドとして政策保有株式を減縮する方向にありますが、流動性の高い株主が増えることが株主提案の増加につながることは否めない事実です。
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コメント
本当は、辞任した監査役さんに、事業報告に辞任理由や意見を書いて欲しいのですが、無理でしょうねえ。
投稿: Kazu | 2023年7月 7日 (金) 21時12分