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2023年7月26日 (水)

関西万博(大阪万博)を前に「ビッグモーター事件」を他人事とは思えないのですが・・・

ビッグモーターの社長さんの記者会見が炎上しています。少し前まで「さすが創業家資産管理会社の100%子会社、黙っていれば逃げ切れるかも」と思っていた方も多いのではないでしょうか。しかし損保大手や国交省・金融庁が動き出したことで、説明責任を果たさざるをえない状況に至りましたね。長い間、孤軍奮闘でビッグモーター社の不正を追い続けてきた東洋経済さん(記者さん?)は、感慨ひとしおではないでしょうか。

同社の調査委員会報告書では社長さんが不正事実について申告を受けながら「工場内の内輪揉めが申告の原因だろう、大げさな話だろう」ということで、調査もせずに現場で問題解決を図らせたということが記載されています。ただ、そうであるならば、本日の記者会見で「私は不正を知らなかった」「報告書を読んで愕然とした」という回答にはならないはず。「ああ、あのとき、甥っ子(従業員)から申告があった不正疑惑は本当だったんだな、調査をしておけばよかったなぁ」が正しい回答ではないでしょうか。

メディアで大きく取り上げられ、誰もが「これはビッグモーター社で起きたこと。そもそもガバナンスも内部統制もしっかりしている他社では起こり得ない」と思っておられるかもしれませんが、いま、大阪万博・関西万博を目の前にして、多くの会社がビッグモーターのようになりそうな予感がします。

ともかく関西万博を期限通りに開催することが「日本の至上命題」といった空気が蔓延しています。そのような空気が漂う中で、資源、人件費の高騰もさることながら、2024年問題を控えて、どうやって人権侵害を防止しながら工期を間に合わせるのでしょうか。国連の人権理事会がヒアリングのために来日していますが、これだけ「ビジネスと人権」が厳しく問われている中で、労働者の人権侵害が発生したら、経営者は「私は知らなかった」「そのような事案が発生したということで愕然としている」では済まないはず。現に、先日、カナダの政府代表から「日本は万博開催のためには働き方改革の例外は認めてくれるのか」という打診がありましたよね。パビリオン建設を真剣に検討している国だからこそ、ビジネスと人権への配慮を日本に求めるのは当然です(例えば読売新聞ニュースはこちらです)。

私は関西万博推進派ですが、もし労働者の人権侵害(年次有給休暇、時間外労働規制、賃金差別規制)のおそれがある場合には、延期になってもやむを得ないと考えています。「なんとしてでも工期に間に合わせたい、という従業員の心意気で、彼らは自主的に休暇返上で頑張ってくれた!」は通らないはずです。ここまでSDGsの意識が世界的に高まっている経営環境を認識しつつ、労働者の人権侵害を黙認するような経営者の物言いを許すとすれば、それはもはやビックモーター社の社長さんと同様です。また、万博開催用地には南北から道路が一本しかないので、そもそも突貫工事をやろうと思っても渋滞のために物理的に困難のようにも思われます(この点について関係者の皆様はどのように対処されるのでしょうか)。

現場では違法行為(人権侵害)が平然と行われているにもかかわらず、「納期は間に合わせなければならない」というプレッシャーのために、SDGsのバッチを誇らしげに付けている関係者全員が「人権侵害について見て見ぬふり」をするような企業にだけは成り下がってはいけないと強く警鐘を鳴らしたい。関西万博は、これに関わる企業の品格が問われるものと考えます。

 

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