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2023年7月18日 (火)

東証・不祥事予防のプリンシプルとビッグモーター事案への対応

(7月18日午後 更新)

ずいぶんと前から東洋経済さんが報じていたビッグモーター社(BM社)の自動車保険不正請求事件ですが、ここへきてマスコミ各社が報じるようになりました。外部へ公表されていない調査委員会報告書の中身もちらほら報じられています。たとえば7月17日の時事通信ニュースによると

中古車販売大手ビッグモーター(東京)が事故車両の修理による収益として工場に1台当たり14万円前後のノルマを課していたことが17日、分かった。作業は多くの未経験者や見よう見まねで働く外国人が担っていたことも判明。

とのことで、かなり戦慄を覚える内容です。しかしBM社自身は非上場会社ということで調査報告書も公表せず、記者会見もなしとの経営判断のようです。BM社はあいかわらずラジオCM等は元気に流しており、コアな顧客の皆様にとってはあまり影響はないのかもしれません。

ところで私として興味を持つのはBM社に保険契約の代理を依頼したり、修理を依頼している大手損保の動向です。SOMPOホールディングス社をはじめ、東京海上HD社や三井住友海上の親会社であるMS&AD社などは、東証の企業不祥事予防のプリンシプル(2018年2月公表)に沿った行動は意識されているのでしょうか。プリンシプルの原則6は

業務委託先や仕入れ先・販売先などで問題が発生した場合においても、サプライチェーンにおける当事者としての役割を意識し、それに見合った責務を果たすよう努める

とあります。BM社が非上場会社であり、保険契約者がどれほどの損失を受けたのか公表もされないとなれば、BM社に代わってサプライチェーンのトップである各損保会社(またはその上場親会社)が保険契約者に真相を説明することこそ「それに見合った責務」となるのではないでしょうか。また、再発防止策が確実に実施されるかどうか、その監視の役割も果たすことで不祥事の予防を図ることも必要かと。

大手損保会社はBM社に対して更なる調査を求める、ということのようですが、この不祥事予防のプリンシプルを意識した対応となるのか、それとも各社の責任回避に向けたリスクマネジメントとしての対応にとどまるのか、かなり注目をしておきたいと思います。

なお、本日(7月18日)の各種報道によるとBM社の社長さんが報酬1年間分を返上する方針であること、さらに国交省が「道路運送車両法違反の事実があるかどうか、今後ヒアリングを行う」(大臣会見)ことが報じられています。いずれにせよ事実関係が明らかにならなければ解決にはならないわけでして、個人の責任問題よりも、組織の構造的な不備について光をあててほしいですね。

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コメント

一時修理工場とのタイアップビジネスを所管していた現役のころから(30年前!)、自動車ディーラー代理店と保険会社との利益相反は業界内ではタブーとなっていました。車両購入代金の割引に保険料の割引を隠ぺいする特別利益の提供など様々な問題が詰まったパンドラの箱が、これを機会に開かれることを期待したいですね。

投稿: Qちゃん | 2023年7月18日 (火) 13時58分

Qちゃんさん、コメントありがとうございます。なるほど、まだまだ業界のタブーはあるわけですね。私的な物言いとすれば「深い闇」の存在です。持ちつ持たれつの関係は良い面もあるかもしれませんが、やはり不正の温床となるだけに、できれば諸事情含めて明らかにされたほうが良いと思います。経営環境は変わったわけですから。

投稿: toshi | 2023年7月18日 (火) 14時20分

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