BM事案-損保ジャパンの調査委員会には社外窓口は設置されないのだろうか
ビッグモーター社の保険金不正請求問題において「馴れ合い」疑惑を持たれている損保ジャパンさんですが、7月26日に「ビッグモーター社による自動車保険金の不正請求への当社の対応を検証することを目的とし、社外弁護士のみによる社外調査委員会を設置」します、とのリリースがありました。さらに、28日にはBM社との保険代理店契約の解消、損害賠償請求の準備に取り掛かることもリリースされました。当社としては「馴れ合い」疑惑を自力で解消するために動き出したと言えそうです。
詐欺罪で刑事告訴や民事賠償請求となれば、第三者によって「損保ジャパンは本当に騙されたのか・・・」という点が厳密に審査されることになります。したがって、裁判の上では相当の覚悟をもってBM社と向き合うことになると思いますが、ひとつ疑問に感じているのが「誰が社外調査委員会の委員なのか」という点が明らかにされていない点です。社外の弁護士が構成員ということですが、設置目的が「不正請求への当社の対応を検証する」とありますので、公明正大な調査であれば委員名を公表すべきではないでしょうか。
昨年11月から今年3月まで私が委員長を務めたアイアールジャパン社の第三者委員会は「マッチポンプ疑惑」の解明が主たる目的でした。損保ジャパンさんと同様、対象会社の利益相反行為の適正性を調査するものなので、社外の顧客や取引先からの情報提供も不可欠と考え、内部通報窓口とは別に、委員会独自の社外通報窓口を設置して、会社のHPからリリースしました(実際、社外からの情報提供があり、真摯に調査をして、報告書を作成しました)。損保ジャパンの関係者がどれほどBM社の不正を認識していたのか・・という点を検証の目的とするのであれば、損保ジャパン内部だけでなくBM社の社員も含めて社外関係者からも(独立した調査委員会に)有力な情報が届く可能性がありますし、そこまで情報提供を求めた上での検証結果を示すことが現在の損保ジャパンには必要ではないかと考えます。
そのためには、まず調査委員会のメンバーが誰であり、どこに情報提供先があるのか、明らかにする必要があります。もう少し先になって通報窓口が設置されるのかもしれませんが「客観性、透明性を確保した調査をします」と公表されているのであれば、社外関係者からの情報提供を促す仕組みを検討する必要がありそうですね。
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コメント
山口先生、いつも大変興味深く拝見しています。
まったくそのとおり、ご指摘の通りかと思います。うがった見方をすれば、既に、「客観性、透明性」が確保されない弁護士(事務所)に調査を依頼しているのではないでしょうか。例えば、金融庁からの報告徴求命令への対応相談などを行っている弁護士(事務所)に依頼しているなど。代理人業務と調査業務とはやる「作業」が同じでも、「心意気」は違うはずです。
投稿: とらねこ | 2023年8月 1日 (火) 15時56分