地銀の「なんちゃってダイバーシティ」は金商法違反?
ジャニーズ事務所問題については多くのグローバル企業を巻き込んでたいへんな状況になっていますね。今朝の日経(法財務)では、「ビジネスと人権」に詳しい専門家の皆様の意見が三者三様で、たいへん参考になりました。まだまだ現在進行形で事態が進みますので注視していきたいと思います。さて、本日は別のお話ですが、9月18日の東京新聞WEBニュースの記事「地方銀行に『水増し』が横行? 『職員3人に2人以上が管理職』にして女性管理職比率が増 各行に聞いた」を読みました。いやいや、金融機関に特有の問題では済ますことができない、ちょっと笑えない内容です。
サステナビリティ開示の一環として「女性管理職比率」が有価証券報告書に記載されるようになり、これに伴い多くの地銀で25%前後の数値が開示されています。しかし、課長代理や調査役を「管理監督者」として含めているため、部下のいない管理職や社員の半分が管理職になってしまったというお話。厚労省の基準とはかなり乖離していますし、「金融機関の管理監督者の範囲」に関する行政通達105号の運用では「管理監督者は二桁台(%)にはならないはず」とされているので、実態と開示との齟齬が生じていると言われてもしかたないと思います。
非財務情報の開示内容については、内容自体で虚偽記載の責任を問うものではない、と(たしか)金融庁の見解が示されていたように記憶しておりますが(間違っていたら訂正いたします)、しかし女性管理職比率については定量的に同業他社と比較することが可能ですから、やはり虚偽記載の問題が生じるようにも思えますが、いかがなものでしょうか。たしかに「厚労省判断を満たさない場合でも、自主的に実態をみて判断してもよい」とのことですが、さすがに常識では考えられないですよね。
上場会社の無形資産(たとえば人的資本)を適切に開示しようとの制度趣旨は理解できますが、それが新たな不正リスクを招くというのはなんとも。。。さらにこの「管理監督者」の評価ミスは労働法違反リスク(時間規制、賃金規制)にも発展しかねず、金商法違反リスクでは済まないように思います(この「管理監督者の範囲」問題は、いまだ最高裁判決も出ておらず、労働法においてはグレーゾーンの領域です)。諸々の不正リスクがある以上、企業としては少なくとも厚労省の判断基準にだけはしたがっておいて、たとえ目標には達していなくても正直な開示を心がけるべきでしょう。
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コメント
似たような事例(?)としてキヤノンの有報の「役員の状況」が昔から気になっています。有報の他の全ての項目では役員の定義に会社法上の役員を用いているにも関わらず、「役員の状況」だけ役員の定義として会社法上の役員+執行役員を用いていて、その結果として女性「役員」の数がゼロではないことに…
投稿: ty | 2023年9月20日 (水) 18時34分
tyさん、いつも有益な情報ありがとうございます。開示情報は投資家の誤解を招くものであってはならないはずです。よほどの注意書きでもないかぎりは、その「役員」の使い方はよくないですね。ひょっとすると、ほかの会社でも同様の使い方があるかもしれませんね。
投稿: toshi | 2023年9月21日 (木) 00時25分