« 四谷大塚元講師ら個人情報保護法違反事件-法人起訴とグループ会社の内部統制構築義務 | トップページ | SMILE-UP(旧ジャニーズ事務所)問題-今後の取引企業の対応について考える(その1) »

2023年10月 6日 (金)

松田教授の日経「経済教室」-能力を伴う多様性確保について

SMILE-UP事案については「NGリスト」などが世間を騒がせており、少々ステークホルダーである企業の対応を論じるタイミングからは逸脱している様子なので、すこし傍観しております。しかしスポンサー企業としても対応に困るような状況になってきましたね。そもそもSMILE-UP社の開示情報をどこまで信用してよいのでしょうか。

さて、今朝(10月6日)の日経朝刊「経済教室-企業統治の課題(下)」では、東京都立大学の松田千恵子教授の論稿が掲載されており、サステナビリティへの企業の取組み(企業の視点と投資家の視点のズレ)や、ガバナンス改革の実質化に向けた多様性の考え方についてきわめて示唆に富む解説がされています。なかでも注目すべきは女性役員比率と業績(ROA)との関係です(これまで、学者の方がここまで明確に意見を述べられた方はいらっしゃらなかったのではないかと)。

私の講演等をお聴きいただいた方ならご存知かと思いますが、私はダイバーシティへの取組みについて「いくら女性の社外取締役を増やしても株価は上がるかもしれないが、業績との関係で有意性は認められない。しかし女性の部長や執行役員の比率が高まれば、間違いなく業績に影響を及ぼす。そのような意味でダイバーシティは重要」と(ここ3年ほど)いろんなところで述べてきました。

本日の松田先生のご論稿(後半部分)では、昨年の学会発表資料に基づいて、「同条件の比較では、女性社外取締役の存在は業績とは無関係だったが、実力で勝ち上がってきた女性執行役員の存在は業績にプラスの影響を与えた」と述べておられます。私は単純に日頃の仕事(ガバナンス構築や内部統制システム構築のお手伝いや有事対応、通報に基づく調査活動等)の中で自身が経験したことに基づいて述べているだけですが、松田先生は調査結果に基づいたご意見。上記ご論稿の中で示された図表をみると、女性執行役員比率と女性社外取締役比率との差は歴然としています。

なぜこのような差が生じるのか・・・という理由については、もちろん私なりの(数々の失敗に基づく)持論がありますが、ブログでは差しさわりがあるので述べません。また、「攻めの経営」との関係では女性社外取締役の果たす役割があまり目立たないとしても、ROAとは関係のない「守りの経営」ではかなり力を発揮する傾向があることから、もちろん女性社外取締役の役割は大きいものと考えています。ただ、企業業績の向上は、なんといっても社員を動かす力が必要であり、そこに女性管理職がどのように関与するか・・・というところで本気のダイバーシティの発想が求められるはずです。

なお、「デモクラフィー型多様性」と「タスク型多様性」の分類についても、「タスク型多様性」は業績にプラスの有意性が認められた、という点には同感です。ただ世間はタスク型多様性を「ダイバーシティ」とは認めない傾向にあるようにも感じています。このあたり、もっと掘り下げてお話をお聴きしてみたいと思いました。

|

« 四谷大塚元講師ら個人情報保護法違反事件-法人起訴とグループ会社の内部統制構築義務 | トップページ | SMILE-UP(旧ジャニーズ事務所)問題-今後の取引企業の対応について考える(その1) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 四谷大塚元講師ら個人情報保護法違反事件-法人起訴とグループ会社の内部統制構築義務 | トップページ | SMILE-UP(旧ジャニーズ事務所)問題-今後の取引企業の対応について考える(その1) »