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2023年10月 4日 (水)

四谷大塚元講師ら個人情報保護法違反事件-法人起訴とグループ会社の内部統制構築義務

今年の代表的な企業不祥事といえばBM(損保大手)、SMILE-UP、日大、電力カルテル、近ツリといったあたりが思い浮かびますが、法律家の視点からすると上場会社の違法配当事案が一番ではないかと思います。先日の日経新聞でも特集記事が出ていましたが、いやいや本当にたくさんの上場会社で「うっかり違法配当事件」が勃発しています(現時点でも次から次へと発覚していますよね)。本当に取締役には過失がなかった、で大丈夫ですかね?私には(こちらのエントリーを書いたときと同様、未だに)モヤモヤ感が残っています(以下、本題)

さて、複数の女児に対する盗撮行為(性的姿態撮影等処罰法違反容疑)で進学塾・四谷大塚の元講師(複数名)が逮捕されましたが、勤務していた四谷大塚についても法人として個人情報保護法違反の容疑で書類送検された、と報じられています(たとえば朝日新聞ニュースはこちらです)。最近は営業秘密侵害行為に対して、営業秘密への要件該当性が乏しい案件に個人情報保護法違反を代替適用するなど、情報保護法違反の適用範囲が広がっているような気がします。

ところでまだ起訴されるかどうかは不明ですが、法人としての四谷大塚が刑事立件されるとなれば、個人情報保護法上の両罰規定に基づくわけですから、法人の過失が否定されれば無罪という可能性もあると思われます(通説的見解)。過失がなかったことを立証するのはかなりむずかしいかもしれませんが、四谷大塚は(不起訴or無罪を)争わないのでしょうかね。

ベネッセ民事訴訟では、ベネッセの保有していた個人情報を(従業員が)窃取した受託事業者と契約していたベネッセ子会社だけでなく、その親会社の民事責任も認められていたので(民法719条に基づく共同不法行為責任)、上場会社である四谷大塚の完全親会社も(株主代表訴訟リスク等の)不正リスク管理が必要な状況にあるように思われます(たしか令和2年の個人情報保護法改正によって法人の罰金が「1億円以下」と格段に上がりましたよね?これは子会社に科される罰金といえども親会社役員にとっても無関心ではいられないはず)。

四谷大塚の個人情報管理体制に問題があったかどうか、という(法人としての)過失を根拠付ける事実の存否だけでなく、親会社の被害拡大防止措置の有無、子会社の不正予見可能性を根拠付ける事実、その他積極的な被害弁償の状況が(コンプライアンス・プログラムとして)賠償額に斟酌されうる、というのがベネッセ判決(東京高裁令和元年6月27日)の要旨だったので、四谷大塚としては親会社と協議のうえ第三者委員会を設置したほうが良いのでは、と思う次第です(最近は「性加害」とか「女児盗撮」といった、あまり当ブログでは取り上げない事件ばかりで恐縮です)。

 

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