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2023年11月 6日 (月)

日大アメフト薬物事件-ガバナンス再構築には改正私立学校法の理解が不可欠

阪神タイガース38年ぶりの日本一おめでとうございます!私は諸事情により(?)、どっちのファンであるかも公言できなかったのですが、関西ダービーは第7戦まで盛り上がりましたので本当に感謝しております。阪神佐藤とオリックス森が期待通りの実力を発揮できなかった点では五分五分でしたね。ともかく第7戦のノイジーの3ランは一年分の年俸の価値があったような気もしますし、第6戦の山本由伸の138球完投は、日本球界への置き土産として最高のパフォーマンスでした。

さて、当ブログでも日大アメフト薬物事件を取り上げていることから、何名かの方から「日大はどうすればガバナンスの再構築が可能か」とのご質問を受けております。しかし、前回のエントリー(11月2日)で申し上げておりますとおり、学校法人のガバナンスは教学のガバナンスと経営体としてのガバナンスが交錯しており、極めて難問でして軽々に申し上げることはできません。

なんといっても、2025年4月施行予定の令和5年改正私立学校法によって、非営利財団法人としての学校法人に初めて「機関」の概念が誕生しますので、再来年施行予定の法律を前提としたガバナンス再構築が求められます。当然のことながら、7,800ほどの学校法人すべてに同じガバナンスが求められるのではなく、日大レベルの収益を上げる大規模財産法人ならではのガバナンスを考える必要があります。したがって現行法から大きく変わる改正法の理解は不可欠です(さらに改正法に関連する政省令や文科省ガイドラインの理解・実践も必要)。仕組み作りについてはマクロの視点から、また運用についてはミクロの視点から非営利組織のガバナンスや内部統制に詳しい方の支援が一番効果的かと。学外理事や評議員に、私立学校法に詳しい方が入る必要がありそうです。

このたびの日大問題を外から眺めてみて、不祥事を防止するための仕組みや運用が必要なことは間違いないのですが、しかし経営体としての学校法人の意思決定の在り方を株式会社のようなイメージで捉えてしまいますと、今度は学外からの支配権介入のおそれが高まりますので、大学の自治つまり教学のガバナンスが毀損してしまうことにつながります(学校法人法の改正がかなり時間を要したのも、この点について私学団体からの厳しい批判・反対があるからですね)。憲法に保障された「学問の自由」を守りつつ、理事長や学長の不祥事を予防するということの「両立のむずかしさ」はここにあります。

そもそも理事長や学長をいかに監視・監督するのか・・・、その仕組みも2025年4月から大きく変わりますので、日大は他の学校法人のガバナンス構築への影響にも配慮しながら、長い目で(学校法人のガバナンスに精通された方々の力を借りて)再構築を図る必要がありそうです。

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コメント

 「学問の自由」との両立とおっしゃいますが、より重要なのは「教育の質向上」なのではないでしょうか。「学問の自由」の定義次第ですが、一般的な受け止め方からすると、そこには大学の重要なステークホルダーである学生の観点が軽視されるように思います。
 また、「学問の自由」を強調すると、「旧態依然とした教授会(あるいは個別の教員)が大学教育を悪くしている」というスローガンが、対立軸としてでてきそうです。
 このスローガンの問題点は、じゃ、世襲等により、ガバナンスなどという意識がほとんど欠けている現在の私学の経営陣に任せれば、うまくいくのか?という観点が抜け落ちていることだと思います。
 私学法の改正等の動きは、そうしたことへの対応策ですが、現在の私学の多くの実態は、改正私学法の建前と大きく乖離しており、「形ばかりの対応」に終始することになりそうです。
 問題点ばかり指摘しては、先に進まないですが・・・。

投稿: 教員のつぶやき | 2023年11月 6日 (月) 13時25分

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