サクセッションプラン(後継者計画)に真摯に対応するための前提条件
11月17日の日経ニュース「トップ後継者計画、対応企業は26%どまり 民間調査」という法務ガバナンス関連の記事を読みました。記事によりますと、日本の上場企業において、経営者の後継を選別・育成する「サクセッションプラン」の導入がなかなか進んでいない、とのこと。民間調査では、サクセッションプランを策定して、これに対応している企業が全体の26%であり、「指名委員会」などトップ人事を監督する体制づくりは進んでいますが、企業価値向上を担える経営者選びなど機能面ではまだまだ課題が多いとされています。
私自身が指名委員会委員をやったり、社外取締役アドバイザーとして支援をしている経験からみて、逆に「26%ものプライム上場会社がサクセッションプランを運用している」という回答のほうが驚きで、どうやって適切に運用しているのか教えてほしいです。私はサクセッションプランをうまく運用できない失敗からの反省は以下の2点です。これらが真摯に対応するための前提条件ではないでしょうか。
ひとつは(前も当ブログで少しボヤきましたが)社長候補者リストの作成とアフターケアーです。3人の最終候補者を選定して、育成して、その中から社長を選ぶのは良いとしても、では選ばれなかった2人に対してどう処遇すればよいのか?指名委員会には現経営者も委員として意見を述べるわけですが、社外取締役の委員と「残る2人の処遇をどうすべきか」あらかじめ議論しておいたほうが良いと思います。
もうひとつは「リーダーシップ」よりも「フォロワーシップ」こそ、社長候補者として大事、という点です。ガバナンスコードでは事業戦略のほうばかりに目が向きますが、どんなに立派な将来計画を立てたとしても、現場がこれを実践する力がなければ絵に描いた餅です。オープンAIのCEOの方が取締役会で解任されたそうですが、今後自分で会社を作り、多くの経営幹部もそちらへ移動する可能性が高いとなるや、今度は会社が引き止めにかかっていると報じられています。中間管理層も現場社員も、社長の方針に賛同するのは簡単ですが、これを実行に移すために必要なものはフォロワーシップだと思います。指名委員会が、このフォロワーシップをどのように評価するのか、ここがいつも苦心するところです。
指名委員会の運用は、下手をすると現社長の専横を許すことになり(「指名委員会が決めた」という事実が現社長のわがままにお墨付きを与える結果となって、かえってガバナンスの後退、機能不全を招く)、委員会を任意で作ったのであれば真摯に運用する覚悟が必要です。記事にもあるように、サクセッションプランの運用について、どう開示するか?という課題がありますが、上記のとおりサクセッションプランの運用はそもそも開示には一切なじまないものであり、指名委員会が汗をかいて根回しをして、ときには密室で喧嘩をして初めてうまく運用できる(結果として業績や収益が向上する)ものと(少なくとも失敗を繰り返した私は)考えております。
| 固定リンク
コメント