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2023年11月 7日 (火)

タムロン特別調査委員会報告書にはストーリーがある(と思う)

8月24日のこちらのエントリー冒頭で、タムロン社前社長さんの不適切経費支出問題の発覚について触れましたが、11月2日に特別調査委員会報告書が公表され、すでに東洋経済WEBニュースでも詳しく報じられています。調査報告書の31頁以下の事実認定部分がとても「おもしろい」と話題になっており、私も拝読いたしました。前社長のA氏だけでなく、前々社長のO氏の不適切な交際費支出の事実にも詳しく言及されています。

最初一読したときは、事実認定とはいえ「開いた口が塞がらない」とか「かかるA氏の主張は一般常識から乖離しており、その経営者の見識を甚だしく疑わせるほど無理がある」「呆れ果てて言葉を失う」といった表現が記されており、ずいぶんと調査委員の感情が込められた報告書のように思えました。

ただ31頁以下の表現は、委員会設置の時点でA氏は社長を辞任しており、なかなかフォレンジックス調査にも協力してもらえなかったことや、ヒアリング以外はすべて代理人弁護士を通じてのコミュニケーションを強いられたこと、さらにはA氏が「経費支出はすべて取締役会の承認を得た予算の範囲内でなされたものであって、何ら問題ない」と主張していたことに、調査委員会が呼応したものと言えそうです。

つまり、経営判断原則や会計基準のモノサシからみて、A氏やO氏の経費支出は裁量権を大きく逸脱したものであり(経営判断原則適用の例外たる私利私欲目的による行動もしくは利益相反行動に類するものであり)、それは限られた証拠からでも判断できることを委員会として説明しなければならない、ということからの表現ではないかと。

そう考えますと、前半30頁と後半50頁はひとつのストーリーに基づいて構成されたものとして合点がいきました。調査委員会の苦労がにじみ出ている報告書であり、今後の参考とさせていただきます。

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