公益通報者保護法の2025年運用改善を目指して-消費者庁始動?
11月6日、公益通報者保護法を所管する消費者庁に寄せられた内部通報に関する相談件数が、今年8月に例月から急増して343件に上ったことが明らかにされました(たとえば産経新聞ニュースはこちら)。ビッグモーター社に関する報道が連日なされ、同社が内部通報をもみ消したとされる内容が多く報じられていた時期で、会社の体制整備や制度面に関する相談が多数寄せられたそうです。
ビッグモーター社の件では、私個人としては、内部通報をもみ消したことよりも、その後内部通報者に「通報は間違っていた」との署名押印をさせたことのほうが大問題と思っております。消費者庁幹部の方も「報道が影響した可能性はある」とのことですが(上記産経新聞ニュース)、おかげさまで(?)、当職にも(数社ばかりではありますが)中堅上場会社から内部通報制度の見直しに関するご相談が増えている状況でございます。
また、11月9日の消費者庁長官の定例会見では、消費者庁が上場企業約4千社を含む1万社を対象に、内部通報体制の実態を調査すること(調査結果は2024年4月公表予定)が報じられています(FNNプライムオンラインニュース)。さらに都道府県や市町村などの行政機関の内部通報制度についても調査予定とのこと(京都新聞ニュース)。そういえば2022年6月に施行された改正公益通報者保護法の「法改正」の機運が高まった時期にも、民間事業者、行政機関に対する消費者庁によるアンケート調査がありましたね。消費者庁も、次の法改正に向けて本腰を入れ始めたのではないでしょうか。
いろいろなところで申し上げておりますが、令和2年改正法の成立により、公益通報者保護法の制定時(平成16年当時)から指摘されてきた課題の見直しがかなり進んだことは間違いありません。しかし、昨年施行された改正法の審議において、今後の検討課題として指摘された事項も複数残っています。衆参両院の特別委員会の附帯決議においても、改正法附則第5条に基づく施行後3年を目途とする見直しに当たり、「行政処分等を含む不利益取扱いに対する行政措置・刑事罰の導入」、「立証責任の緩和」、「退職者の期間制限の在り方」、「通報対象事実の範囲」、「取引先等事業者による通報」、「証拠資料の収集・持ち出し行為に対する不利益取扱い」等の検討を求めています。これらの検討項目には、私自身も消費者庁の法改正検討会メンバーとして、このたびの法改正に盛り込むべきと主張しましたが、時期尚早として見送られたものが多く含まれています。ちなみに附則第5条とは、
(令和2年6月12日法律第51号)附則第5条
政府は、この法律の施行後3年を目途として、新法の施行の状況を勘案し、新法第2条第1項に規定する公益通報をしたことを理由とする同条第2項に規定する公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置の在り方及び裁判手続における請求の取扱いその他新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
なる条文です。つまり2025年を目途に法運用の改善に向けた対応が執られることが予定されています。原始法制定時には「5年を目途に」されていたのが「3年を目途に」とありますので、改正法施行から1年半経過時点ではありますが、更なる法改正に向けた流れが進みそうですね。立法事実の積み重ねが、これからも法改正のカギを握るように思われます。
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