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2023年11月22日 (水)

少数株主による合法的な会社乗っ取り(従業員ガバナンス)

FanseatでサッカーW杯2次予選「日本対シリア」をLive視聴しておりましたが、5-0ということで日本の強さばかりが目立った試合でしたね。シリアはほとんどシュートも打てなかったように見えました。

さて、対話型AI(人工知能)「ChatGPT(チャットGPT)」を運営する米オープンAIのサム・アルトマン前最高経営責任者(CEO)の解任をめぐって、同社の混乱が深まっています。同社従業員の約9割がアルトマン氏の復帰を求め、叶わなければ退職する意向を示したと報じられており、従業員らはアルトマン氏の解任に賛成した同社の社外取締役3名に対して解任通告を行ったそうです(たとえばこちらの朝日新聞ニュース 混乱極まるオープンAI アルトマン氏解任の背景にある「いびつさ」)。「従業員ガバナンス」を彷彿とさせる事件です。

もちろんオープンAI社の場合は記事にもあるように非営利法人が営利法人の支配権を握るといった特異なガバナンスが構築されていたり、従業員の数もかなり多いという事情もあって、「従業員資本主義」とまでは言えませんが、日本では少数株主が支配株主を会社から追い出すために「従業員ガバナンス」を活用する(?)ケースは時々あります。乗っ取り屋としては、ターゲットとなる会社のナンバー2とかナンバー3(以下「ナンバー2」といいます)で、しかも経営幹部層(部長クラス)にとても慕われている人に接近して、大株主である経営者を少数株主(主にファンドや同業者大手)が追い出すケースですね。

経営者が大株主の地位で当該ナンバー2を排除しようとすると、多くの支店長や工場長が「ナンバー2のほうについていきます」と宣言して会社の機能をマヒさせてしまう、というもの。もちろんナンバー2が乗っ取り屋の支配下で社長になる、ということです。前回のエントリーでも書きましたが、経営者は「自分にはリーダーシップがある」と考えている人が多いのですが、実はフォロワーシップがない(実は自分のことを客観的に評価できる人はとても少ない)ことに有事になって初めて気が付く、というもの。

ナンバー2の反乱に気づいたときには、もうほとんどの幹部層がナンバー2に賛同しているという始末。乗っ取り屋としては、あとは適正価格で経営者から持分を買取る手続きに移行するというストーリーです(抵抗して株式を紙屑にしたほうがよいか、適正価格で換金したほうがよいか、現経営者は法律家と相談して決断します)。医療法人や社会福祉法人の統合にもよく使われる手ですね。画策に社長が早期に気づけば社長にも対抗手段が考えられますから、乗っ取るほうは秘密裡に動く(そのために社内力学に精通している必要あり)ことが肝要です。

大会社においても、たとえば三越事件やヤマハ事件、セイコーインスツルメンツ事件など、経営者交代に従業員ガバナンスが機能した事例はいくつかあります。前回エントリーで述べた通り、私が指名委員会の委員として気を付けていたのは、当該社長候補者にフォロワーシップが認められるかどうか、という点でした。昨今の人的資本充実の要請とも合致すると思います。

 

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