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2023年12月 4日 (月)

日大アメフト薬物事件-「廃部決定」の審議は時期尚早と考える

自民党派閥のパーティーに関する政治資金規正法問題について、不透明な処理を批判するのは正当だが、検察が立件するのはかなり厳しいのではないかと思っていたところ、12月3日のサンデーステーションに生出演されていた郷原弁護士が明快に同様のご意見を示しておられたので、やはり刑事立件はハードルが高いなあと感じております。ただ、民主主義の前提となる「お金の話」なので、ぜひ検察は積極的に動いていただきたい(以下本題)。

日大アメフト薬物事件について、第三者委員会報告書が公表されてからの報道をみておりまして、展開が混迷を極めているように感じているのは私だけでしょうか。とりわけアメリカンフットボール部の存廃をめぐって、いろいろなご意見が示されておりますが、私はまだ今回の薬物事件の全貌が明らかになっていないので、決めるのは時期尚早かと思っております。ガバナンスの再生と事件の手じまいは別ではないかと。以下は私の個人的な意見です。

このたび、最初に逮捕された元アメフト部員に対する正式裁判の様子が報じられていますが(産経ニュースはこちらです)、この裁判が(大麻ではなく)覚せい剤を保持していたことが重要な要素であることを報じるメディアはあまりありません。なぜ覚せい剤を保持していたにもかかわらず、大麻を保持していた罪に問われているのか、という理屈はなかなかむずかしいのです。昭和61年のこちらの最高裁判決でも、麻薬と思っていたものが実は覚せい剤だった事件について、麻薬取締法違反の成立を最高裁が認めていますが、一部の裁判官から補足意見が出ており「なぜ覚せい剤を保持しているのに麻薬取締法違反罪が成立するのか、おかしいではないか」との合理的な意見が出てくることにも言及しています。

元アメフト部員が公判で「長い間大麻を使用していた」といった供述をしていることが報じられていますが、これは覚せい剤を保持していたにもかかわらず大麻取締法違反で立件するために必要不可欠な供述であるがゆえの証言です。覚せい剤はどのような目的で保持していたのか、という点に裁判官が補充質問をしているのも同様です。ちなみに後から逮捕された別の元アメフト部員については略式裁判で罰金が確定していますが、これは覚せい剤の使用や所持とは関係なく、純粋に大麻取締法違反だけの事実が問題だったからだと思われます。

警察・検察が日大アメフト薬物事件を立件する最大の目的は(何度も当ブログで申し上げているとおり)日大の学生を通じて教育機関と反社会的勢力との癒着のおそれが生じており、これを絶対に防止して教育機関を守ることにあります。8月の報道では、元アメフト部員は「小さな塊は密売人から『おまけ』として渡された」と説明していると報じられていました。この点において、こちらの高橋弁護士の解説が的を得ていて、この「おまけ」こそ、反社会的勢力の常とう手段だということです。大麻ではさほどの収益につながりませんが、大麻使用を通じて覚せい剤の常習者に仕立て上げて高額の収益を反社会的勢力が稼ぐという構図です。おそらく大学に反社会的勢力が接触するためのストーリーの一つかと思います。オーバードーズの10代に近づいて「おまけ」を渡すとかホストクラブに通う若い女性を最終的には借金漬けにして収益を上げるというストーリーにも似たところがあります。

ところが元アメフト部員は公判で「おまけとして密売人からもらった」とは証言しておらず、報道によれば「友人から預かってほしいと依頼を受けて所持していた」と証言したそうです。「おまけとして・・・」という証言であれば、そこで話は完結していたかと思いますが「友人が密売人からもらったものを今年3月に預かった」ということになりますと、「覚せい剤を所持していた友人が別にいる」ということになり、おそらく警察・検察の捜査はそちらにも及ぶことになるでしょう。もはや大麻ではなく覚せい剤の話となり、反社会的勢力に資金を支援していた、という意味では違法性の程度が大きく変わります。そのあたりの全貌が明らかになってはじめて「アメリカンフットボール部を存続させるべきか、廃止とすべきか」という議論の前提がようやく確定するのではないでしょうか。

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コメント

12月01日NHK首都圏 NEWS WEB
日本大学の3年生でアメリカンフットボール部に所属する北畠成文被告(21)は、ことし7月、学生寮で覚醒剤の成分が入った錠剤のかけらを麻薬と勘違いして持っていたとして、麻薬取締法違反の罪に問われています。

投稿: unknown1 | 2023年12月 4日 (月) 17時41分

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