非財務情報開示と第三者保証(そのための準備)
週末、仕事で浜松に行ってまいりました。帰りに「おんな城主井伊直虎」ゆかりの龍潭寺に立ち寄り、美しい庭園(写真)を見て回りました。短い滞在時間でしたが、昼は浜松餃子、夜は鰻をごちそうになり、かなり観光色の強い出張でした。以下本題です。
先週、親子上場の意義に関する開示と社外取締役に期待される役割なるエントリーを書きましたが、本日の日経ニュースでも「企業の環境配慮、開示要請へ環境省指針 ESG投資に対応」なる見出し記事が掲載されていて、環境省は企業の事業活動が水や森林、生物多様性といった自然資本にどのような影響を与えているか(2024年春頃に評価指標を例示して)開示するよう求める、とのこと。上場会社とそのグループ会社を中心に、様々な非財務情報の開示がとても重要になってきました。
そうなると開示された非財務情報の信用性はどのように担保されるのか。おそらく第三者保証と内部統制報告の見直し、ということになるのでしょうね。J-SOX改訂では、内部統制の基本的な枠組みとして「財務報告の信頼性」から「報告の信頼性」確保、と変わりましたし、監査法人による限定的保証→合理的保証による第三者保証の在り方が本格的に議論されることが今後予想されます。このような状況で懸念されるのが「担当役員に丸投げ」です。私の経験上、関連事業部門の抵抗に負けて「部分最適のつなぎ合わせ」となってしまって、不正リスクの温床になってしまいかねません。
企業側として、今後準備しておくべきは監査法人とのコミュニケーションの促進だと思います。先日、いなげやの会計監査における(会社と会計監査人間での)トラブルが発生しましたが、「どっちが悪い」ではなく、対話目的を明確にしたコミュニケーションの不足ではないかと考えます。同様に、非財務情報の開示プロセスや開示内容の過不足、その真実性確保についても、これまで以上に会社側と会計監査人側とで意見のすり合わせが必要になると思います。
EUでは、2024年からサステナビリティに関する情報開示基準の適用が予定されています。また、米国では気候関連開示に関する限定的保証が2024年から導入され、さらに2026年からは合理的保証による第三者保証の導入が予定されています。日本でも、すでに2023年3月期の有価証券報告書から非財務情報の開示項目が拡充されていますが、2025年3月期以降から非財務情報の開示基準の適用が検討されています。
ということで、海外に平仄を併せる形で第三者保証制度が導入されることも想定されますが、監査法人任せにすることなく、内容面・プロセス面いずれにおいても企業の経営陣が「どうすれば第三者保証を速やかに得られるのか」先頭に立ってガバナンスや内部統制の整備(とりわけ現場における抵抗の強い既存の業務執行の改廃)を今から検討すべきではないでしょうか。また、非財務情報の報告と財務報告との整合性や関連性についての考え方も経営陣として議論しておくべきと考えます。
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