親子上場の意義に関する開示と社外取締役に期待される役割
ひさりぶりのガバナンス関連のお話です。12月11日の日経ニュース「親子上場の意義、東証が開示要請 1000社超が対象」では、この12月にも、東京証券取引所が親子関係や持ち分法適用関係にある上場会社1000社超に対して企業統治に関する情報開示の拡充を求める、と報じられています。親会社(支配会社)側は上場子会社を持つ意義や、子会社の独立性確保のための取り組みなどの説明が必要になり、少数株主の利益を脅かしかねない親子上場などには相応の説明責任を求めるとのこと。また、情報開示の拡充は、上場子会社や上場関連会社を持つ親会社・大株主側と、株式を持たれている子会社・関連会社側の双方が対象となるそうです。
アスクル・ヤフーの事例が紹介されていますが、とてもなつかしいですね。(アスクル・ヤフーの件ではありませんが)私、親会社側の社外取締役として、機関投資家から「上場子会社との関係を今後どうするのか、その理由と結論を述べよ」と質問を受けたこともありますし、また上場子会社側の社外取締役として、完全子会社化時点の統合比率の正当性を判断する特別委員会の委員を務めた経験もあります。とくに(親会社側では)子会社の上場をなぜ維持するのか・・・という点は取締役会で何度も議論をした記憶がありますし、当該子会社の経営陣や社外役員の意見をお聞きしたこともありました。
以前も申し上げた通り、上場子会社(従属会社)側の社外取締役は(有事となれば)少数株主から株式取得価格決定申立(非訟事件)を受ける可能性がある、と考えておいたほうがよいと思います(私の場合、さすがに最高裁で決着がつくまで4年ほどソワソワしておりました)。とりわけ今年の伊藤忠・ファミマ決定の影響もあり、(会社から独立した)社外取締役の法務アドバイザーを「費用」としてつけることを検討しても良いでしょうね。SBIとSBI新生銀行の件も社外取締役の方々がご苦労されていましたね。
むずかしいのは親会社側(支配会社側)の社外取締役として、被支配会社の株式をどうすべきか、機関投資家から質問を受けた場合です。現状維持、完全子会社化、株の売却(保有比率の縮減)のいずれかの判断を、(インサイダー情報リスクに配慮しながら)理由とともに説明しなければなりません。資源配分における全体最適を重視するのか、当該従属会社の意向を尊重するのか、なぜ過半数の株を保有している状況で「できないこと」が完全子会社化によって「できること」になるのか、さまざまな考慮事由があります。また、先日のセブンアンドアイの百貨店売却の状況などをみておりますと、ソフトランディングの難しさも感じます。
親子上場の意義等を開示するようになったとしても、おそらく開示情報は抽象的な内容になるような気がします。実際に株主に説明しなければならないのは個々の上場会社のグループ経営方針に基づく将来見込みくらいになりますでしょうか。
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