ビッグモーター事件-SOMPOホールディングスの「親会社監督責任」とは?
1月15日の夜、日経ニュース「SOMPO・損保ジャパン改善命令へ ビッグモーター問題」が特報としてアップされましたが、ビッグモーターによる保険金不正請求問題に関連して、金融庁は近く損害保険ジャパンと、親会社のSOMPOホールディングス(HD)に保険業法に基づく業務改善命令を出す方針を固めた、経営管理体制に大きな不備があったと判断した、と報じています。
これは驚きました。私は損保ジャパンについては行政処分が出るのは当然と考えますが、昨年9月のこちらのエントリー「ビッグモーター事案-損保ジャパンの親会社責任を認めるのは難しいのでは?」でも述べたとおり、親会社であるSOMPOホールディングスについては不正を認識していながら黙認していたようなことがないかぎりはグループ経営管理に違法性は認められないと考えておりました。あくまでも記事レベルですが、「(金融庁は)SOMPOホールディングスについては子会社の損保ジャパンの監督責任を十分に果たしていなかった点を問題視した。グループ全体に適切なガバナンス(企業統治)を構築する責任を負う立場でありながら、損保ジャパンとビッグモーターとの関係を正確に把握できず、契約者の被害を防ぐ監督なども不十分だった」とあります。
ちょうど2年前の1月、ビッグモーターの社員が損保協会に内部告発をしたことでビッグモーターの不適切請求問題が浮上してきたと思いますが、その時点でSONPOホールディングスとしても対応が必要だったのでしょうか。そういえばSONPOホールディングスが設置した第三者委員会が年明けにも最終報告書を提出する予定とのニュースもありましたが、たしかSONPOホールディングスの管理責任についても調査範囲とされていたので、委員会の調査結果なども踏まえて金融庁としての判断を決めたのかもしれません(あくまでも推測です)。いずれにしてもSONPOホールディングスの社外取締役の方々も落ち着かないでしょうね。
東京海上グループ、MS&ADとは異なり、SOMPOホールディングスは経営判断の迅速性を重視してグループ会社の裁量権限を広めてきたように思います。では、どのように監督していれば損保ジャパンとビッグモーター社との不適切な関係を把握できたのでしょうか。他の大手中古車販売のネクステージやグッドスピードとの関係でも同じ監督が求められていたのでしょうか。さらには他の損保大手については同様の監督責任は生じないのでしょうか。金融庁が監督責任を認めるにあたっては、後出しジャンケンではない合理的な理由が示されるかどうか、とても興味深いところです。
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コメント
大変お久しぶりです。本件は金融庁の監督指針が下記となっているので、持株会社への処分はずっと当然だと思っていました。持株会社側が逃げ切れると思っていたとしたら、個人的にはその方がびっくりです。
保険会社向けの総合的な監督指針
I-2(2)
本監督指針においては、保険会社及び保険グループ(注)(以下、Ⅰにおいて「保険会社等」という。)の監督事務に関し、その基本的考え方、監督上の評価項目、事務処理上の留意点について、従来の事務ガイドラインの内容も踏まえ、体系的に整理した。・・・・
(注)「保険グループ」とは、保険業を行う子会社の経営を管理する保険会社又は保険持株会社及びその子会社等の集団をいう。また、保険グループを構成する各会社を「グループ内会社」といい、グループ内会社のうち当該保険グループの経営管理を行う会社を「経営管理会社」という。
VII .グループベースでの監督等 ←ここに詳しく持株会社の監督の視点が記載されています。
投稿: MAX | 2024年1月18日 (木) 13時47分
ありがとうございます。昨日来、MAXさんと同様のご意見をいただいておりまして、反省しきりです。処分が出た時点でまた追加エントリーを書きますので、またご教示ください。
投稿: toshi | 2024年1月18日 (木) 13時57分