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2024年2月26日 (月)

東証が示す「上場会社の内部管理体制のポイント」を平時にこそ理解する

2月13日付けエントリー「会社役員の免責根拠となる『信頼の原則』の前提について」でご紹介しました記事の続編ですが、週刊経営財務2024年2月19日号(3642号)では「東証上場会社の不正・不祥事に対する措置の最新事例とその傾向について」と題する連載記事の最終回(個別事案の内容分析)が掲載されています。いずれも特設注意市場銘柄に指定された上場会社の実例を挙げ、なぜ不正・不祥事に至ったのか、その原因分析と(他社でも参考となる)内部管理体制整備のポイントが自主規制法人上場管理部のご担当者の視点で示されています(おそらく、東証の考え方ではなく、執筆者個人の意見も含まれていると思いますが)。

ご承知の方も多いかもしれませんが、東証では今年1月から「特設注意市場銘柄制度の積極的な活用等のための上場制度の見直し」が実施されておりまして、審査期間が実質1年に短縮される(これまでは1年6か月までの指定継続あり)、指定解除要件が明確化される(「問題があると認められない」→指定解除、から「適切な内部管理体制の整備運用が認められる」→指定解除 へ変更)5年経過時まで改善状況報告書を提出させる等、上場会社に対して内部管理体制の強化を要請しています。そこで、上記記事における東証自主規制法人の分析は、今後特設注意市場銘柄(今後の呼称は「特別注意銘柄」)に指定される可能性のある上場会社だけでなく、会計不正事件等の発生により公表措置、改善報告書の徴求を求められた会社についてもとても参考になると思われます。

私も2019年、会計不正事件で公表措置、改善報告書徴求の対象となった上場会社の「ガバナンス改善委員会」の委員長として、定期的に東証からのインタビューを受け、委員会としての報告書を提出しておりましたが、わずか1年の間に根本原因としての構造的な不備の解消やガバナンスの再構築を実施することはかなりの作業でした。たまたまメインバンクから(CROとして)副社長就任者を迎え、この方を通じて内部管理体制の改正を加速することができましたが、やや運にも恵まれていたように思います。

「どうせ1年で改善されていなくても、そんなに簡単に上場廃止にするわけないだろ」と思っておられる方がおられるかもしれませんが、今後は明確に改善したと認められる場合でないと指定解除にはなりません。昨年来、東証は上場会社に対して「資本コストを意識した経営」を提唱していますが、内部管理体制の強化は企業自ら資本コストを下げるために不可欠な対応です。おそらく「ここまでやらないといけないのか」と思われる経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、当局のご担当者が内部管理体制のどこに目を向けているのか・・・といったところが具体例(3例)からも伝わってくるはずです。こちらも週刊経営財務を定期購読されている方はぜひご参考にされてはいかがでしょうか。

 

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