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2024年3月28日 (木)

日経「新話深談」におきまして、当職を取り上げていただきました。

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事務所近くの大阪中之島のホテルでは、28日午前10時から小林製薬の定時株主総会が開催されます。紅麴問題で大混乱の最中の株主総会ですから、おそらくたくさんの質問が株主からなされることでしょう(一週間で株価が20%ほど下落した以上、当然かも)。著名人が多い同社の社外取締役の方々(全員再任候補)にも「なぜ公表までこれほど時間を要したのか?いつからあなたは知っていたのか?そもそもあなたは創業家社長に何を助言したのか?」といった質問が飛んでくるかもしれません。とりわけ「危機管理・コンプライアンスへの知見が高い」とされる社外取締役の方は「針の筵」ではないかと。このような時期こそ「社外取締役はただの『お客様』ではない」ということを株主の皆様に示す必要がありますね。

(ということで)朝から「電子版」を見ました!と、いろいろな方からご連絡をいただきましたが、3月27日の日経夕刊「新話深談」(関西版)に、当職を紹介いただく特集記事を掲載していただきました。このように人物をご紹介いただく記事は2009年12月の朝日新聞「ひと」欄以来です(当時のエントリーはこちらです。いまはこんなポップな感じでは書けないです(笑))。記事の内容は、当ブログでずっと申し上げているような「企業統治改革、この10年」でして、社外取締役経験者が社外役員制度を語る(「社外取締役は『脱』お客様を」とのタイトル)というところが新鮮だったようです。

日経電子版(おそらく有料版)記事のほうは全国からご覧いただけますが、日経夕刊(関西版)紙面の撮影写真とは異なります(電子版のほうは私がお気に入りの商店街の前に立っている写真まで掲載していただきました)。電子版のほうの屈託のない笑顔は、現在進行中の案件関係者の方々がみたら「先生、こんな笑い方するんだ・・・冷(笑)」と思われそうで、お恥ずかしいかぎりです。

しかし、プロのカメラマンというのはおそろしい。記事の内容をご覧いただくとおわかりのとおり、けっこうまじめに語っていたのですが、ほんの少しスキを見せた瞬間を撮影されてしまいました。まぁ、これまでは深刻な顔の写真しか掲載されてこなかったので、「商店街巡り」の趣味記事と同様、ご笑覧いただければ幸いです。また、当ブログをたくさんの方に知っていただき、閲覧してくださる方が増えることを期待しております。

なお、このたびは日経新聞大阪本社の記者の方にはお世話になりました。ありがとうございます。

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2024年3月26日 (火)

(追記あり)小林製薬・紅麹問題が投げかける「サプライチェーン・コンプライアンス」

(短めのコメントで失礼します)昔からの小林製薬商品のファンとして、このたびの有事は残念でなりません。ただ、新たにサプリメント摂取者に20人の入院者が確認されるなど事態は深刻です。朝日新聞ニュースによると、小林製薬としては取引先に対応を要請しているとのことですが、紅麴原料を取引している52社(さらにはこの52社から原料を転得しているサプライチェーン)はいったいどこの企業なのか、宝酒造や大塚食品、紀文食品、竹屋(タケヤみそ)のように自主的に公表してもらわないと、消費者にはわからないのが現実でしょう。

おそらく小林製薬側としても取引先の自主判断に委ねざるを得ず、さらには取引先も、単に売上が減少するのでは、といった不安からではなく、その先にも迷惑がかかるのでは?といった判断からか自主公表をためらっているのかもしれません。しかし、早く公表して回収を急ぎ、消費者の使用を止めなければ被害が拡大する可能性も否定できません(小林製薬自身に対しても、こちらの読売新聞ニュースのように、なぜもっと早く公表しなかったのか、と疑問が呈されています)。

自社やサプライチェーンの損失よりも、まずはお客様の生命・身体の安全を第一に考えるという姿勢が、いま小林製薬のサプライチェーン企業に求められているのではないでしょうか。もし消費者庁や他社の公表によって自社の名前が公表されたりすれば「あの会社は顧客の安全よりも自社の利益を最優先に考える企業」といったレッテルをかなり長期にわたって世間から貼られることになりそうです。

とりわけ取引先企業の監査役(監査役員)の皆様、企業の持続的な成長の視点から、今どのような企業行動が求められているのか、経営陣と冷静に検討されることをお勧めいたします。まさに監査役の有事対応が求められているのではないかと。

なお、昨日のエントリー(追記)において、

BtoBだけでなくBtoCの売上も大きいだけに「安全」だけでなく「安心」も回復する必要があります。そこをどう乗り切っていかれるか。

と書きましたが、小林製薬は研究所サイトの「紅麹」のページを一時非公開にしましたが、社内で議論があり、再度公開したそうです(こちらのニュース参照)。決して紅麹自体が体に悪いわけではないのですから(たとえばNHKニュースの名古屋大学教授のコメント参照)このあたり「安全」ではなく「安心」を冷静に消費者に伝える難しさを感じます。皆様だったらどう対応されますでしょうか?

(3月26日12:45追記)さきほどアップされた日経ニュースによると、小林製薬は社内調査の期間中、厚労省に報告をしておらず、これを厚労相が遺憾とするコメントが出されたそうです。最初の情報提供から公表まで2カ月を要したことについては、様々な調査に時間を要したのではないかと推測しますが、さすがに厚労省には逐次報告をしているだろうと思っていました。このあたりは有事対応としていかがなものか、今後議論を呼びそうです。

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2024年3月25日 (月)

(追記あり)小林製薬「紅麹」回収問題と「やぶへびコンプライアンス」

現在関わっている調査業務も、いよいよ今週~再来週あたりがヤマ場でありまして、おそらく4月中旬には普段通りにブログの更新もできるような気がしております(順調にいけば・・・ということですが)。ただ、この半年間、どんなに忙しくても「ブギウギ」だけは連日ズキズキワクワクしながら視聴しておりました😃(おもにNHKプラスです。いよいよ最終週ですわ!泣)。ただ「あまちゃん」「カーネーション」の頃とは違い、周りで「ブギウギ」を語り合える人があまりいないので、少し寂しい思いをしております。

さて、先日小林製薬の総務部長さんの新刊書をご紹介したところでしたが、ホントに会社が心配な状況になりましたね。本日は小林製薬を揶揄するものではなく、お取引先の対応に関する問題です。回収の対象となっている紅麹の成分がずいぶんとたくさんの取引先(海外含む)商品に使用されており、今度は取引先が商品の回収に動いている、とのこと(たとえば時事通信ニュースはこちらです)。小林製薬としては「企業様向けに販売している紅麹原料(販売元:小林製薬バリューサポート株式会社)についても回収対象としており、取引先様にご連絡し個別に対応をしております。」とリリースしておられますが、自社商品である以上、各取引先としても自己の責任において積極的に回収に動くことになるのでしょう。かなり対応が難しいですね。

取引先にとって、いくら他社責任の不祥事とはいえ、自社が巻き込まれた以上は社会的な信用を毀損するような対応だけは避けなければなりません。昨年のビッグモーター事案の損保ジャパン、旧ジャニーズ事務所事案の放送局、スポンサー企業のように、他社事例が発覚しなければ社会的信用毀損に至らなかった、といった「やぶへびコンプライアンス」は常にリスクマネジメントの対象として検討しておく必要があります(ただ「まさか小林製薬さんが・・・」といった信頼はありそうです)。

なお、当ブログでは2007年以来、すでに17年ほど前から「やぶへびコンプライアンス」については警鐘を鳴らしてきました(たとえば2007年のシンドラーエレベータ事件2012年の美貴亭食中毒事件、等のエントリーで私なりの視点で詳細に解説しております)。こういった他社不祥事に巻き込まれた際の危機対応は、ときどきリスクマネジメントに長けた役員がいらっしゃって、属人的な素養で(ビックリするくらい上手に)乗り切れる会社があるのですよね。過去にずいぶんと学習させていただきました。今回も(紅麹原料を取り扱った取引先が52社ほどあるそうですから)すでに報じられている宝酒造、紀文食品等以外の取引先がどのような対応をされるのか、注目しておきたいと思います。

(3月25日13時追記)日経ニュースによると小林製薬の株価が「ストップ安気配」とのこと。実際に健康被害の可能性あり、となると、相当に厳しい状況です。BtoBだけでなくBtoCの売上も大きいだけに「安全」だけでなく「安心」も回復する必要があります。そこをどう乗り切っていかれるか。

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2024年3月16日 (土)

週刊東洋経済にインタビュー記事が掲載されました(トヨタ自動車関連)

Img_20240316_211646341_512あいかわらず本業の調査業務やガバナンス支援業務が忙しすぎて、更新ができない状況です。ということで広報のみ。週刊東洋経済3月23日号の特集「緊急特集(絶頂)トヨタの試練」におきまして、当職のインタビュー記事が掲載されました(49頁)。

それほど長いものではありませんが、一連のグループにおける品質不正事件についての親会社(トヨタ)の経営責任に関するお話です。牛島弁護士、安岡教授、八田先生など、かなり厳しめの意見が出てきそうな方々とご一緒しておりますので、ちょっと薄味かもしれません(笑)。ご興味のある方はWEBでも雑誌でもお読みいただけますので、ぜひご一読ください。

あと日経モビリティにも当職のインタビュー記事が掲載されていますが(3月13日付け)、こちらは会員の方しか閲覧できませんので、残念ですが告知のみ。

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2024年3月11日 (月)

ハラスメント問題はタテ軸とヨコ軸で考える時代になった(と思う)

この3年ほどの間に出版された企業向け「ハラスメント対策」に関する本を立て続けに5冊ほど読みました。「3年ほど」と限定しているのは、労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)30条の2が本格施行されたことで、(企業のリスクマネジメントの向上という目的において)事業者におけるパワハラ対策の必要性が高まり、ハラスメント対策本の解説も、そこに焦点があてられるようになったからです。ざっと読んだだけではありますが、最新事情に触れて、いろいろとブラッシュアップできました。

ハラスメント対策が企業のリスクマネジメントとして重視されるに至った背景事情としては、①パワハラ・セクハラ防止対策は(中小事業者を含め)職場安全配慮義務の一環との社会的認知が高まったこと、②「ビジネスと人権」への企業の対応に世間の関心が集まっていること、③企業のサステナビリティ経営に向けて、人的資本の拡充、開示が要請されるに至ったこと、④2022年6月、改正公益通報者保護法が施行され、保護要件の緩和された監督官庁へのハラスメント通報が急増していること等の影響が大きいものと思われます。

ということで、事業者側としてはハラスメント問題はヨコ軸とタテ軸で対応を検討する必要があると考えます。ヨコ軸とは「ハラスメントの相談、通報は被害者からではなく、同じ職場の第三者(しかも複数社員による共同相談、共同通報)からのものが急増」という点です。職場環境の問題として、社員は他者へのハラスメントについても相談、通報することが多く、加害者による「犯人探し」や「不当な圧力による証拠隠滅」の不安も比較的低減する傾向にあるのでしょうね。かつては退職者による通報なども多かったように記憶していますが、現在は現役社員が職場環境を向上させる目的で上司に相談、もしくは社内窓口や監督官庁に通報をする例が増えています。

そしてもうひとつ「タテ軸」とは、部下から相談を受けた上司や通報を受理したコンプライアンス部員が相談や通報に対して十分な対応を怠った場合、その上司やコンプライアンス部員の言動(不作為)も「二次セクハラ(セカンドセクハラ)」や「二次パワハラ(セカンドパワハラ)」として訴えられたり、懲戒処分の対象になるというケースが増えているという点です(有名なのは、最終的には裁判で否定されたもののサントリーホールディングス事件の裁判例ですね)。ステイクホルダーは、企業の将来価値を判断するにあたり、どんなハラスメント事象が発生したのか、ということよりも、ハラスメント問題に企業がどのように向き合っているかという点を知りたいわけですから、このような流れになるのは当然かと。

このあたりのハラスメント問題への対処に関する考え方を理解しておくことは、とても重要ではないかと思います。

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2024年3月 7日 (木)

攻めの事業戦略をとん挫させる「社長のセクハラ」の脅威

本日はショートエントリーです。3月6日付け東洋経済オンラインの会員記事「三菱商事が『ローソンを非上場化』する真の狙い-【KFC売却】も俎上、聖域なき中西社長の事業再編」を読みました。本来は三菱商事のしたたかな資本効率重視の経営姿勢を紹介する記事ですが、本論とは異なるところで意外な事実に驚きました。

公表資料によれば、2022年12月から協議に加わった別の「パートナー候補者」がいた。複数の関係者によれば、この「候補者」はENEOSホールディングスを指す。だが、2023年12月下旬に酒席でのセクハラ行為による社長の解任騒動があり、同社は協議から離脱する。

とのこと。ENEOSホールディングスの社長セクハラ事件といえば、昨年12月20日のエントリー「コンプライアンス担当役員の不祥事発生時における結果責任」でもご紹介したとおり、内部通報が機能した「モデル例」としても有名です。この事案さえ明るみになっていなければ、ENEOSは三菱商事と共同してローソンの経営に参画していた可能性があるということですね。このような事実をみるに、経営者のハラスメント防止は「守りの経営」と言われてきましたが、もはや「攻めの経営」を支えるリスクマネジメントの要と言えます。

このような事実を目の前にして「社長セクハラは見て見ぬふりをしないと持続的成長が阻害されてしまう」と考えるか「当社の成長のためにも、指名委員会はハラスメントから無縁な社長を選任しなければならない」と考えるかは、皆様次第です。しかし内部通報と、これに応えるガバナンスの威力はおそろしい。

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2024年3月 5日 (火)

経営にインフルエンスを与える法務になろう(新刊のご紹介)

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明治のチェルシーが販売終了ということで、すぐに思い浮かぶのがシモンズのCMソング(1971年)です。当時小学生だった私は「どっちのお姉ちゃんがタイプかな」などと友人とはしゃいでいたのを憶えています。昨日(3月3日)のNHK「サザンオールスターズ45周年記念ライブ」では2曲目に「白い色は恋人の色」を桑田さんが唄いましたが、こちらはベッツィー & クリスでしたね(1969年)。ちなみに「チェルシー」の作詞は安井かずみで、「白い色は」の作曲は加藤和彦でした。こんな話を冒頭でしている私はすっかり高齢者です。🐱

さて、3月4日、もうかれこれ18年近く前からのお仕事仲間である木村孝行氏(小林製薬総務部長)のご著書「経営にインフルエンスを与える法務になろう」が店頭に並ぶとあって、さっそく入手しました(経営にインフルエンスを与える法務になろう-木村孝行著 商事法務 2,400円税別)。まだ中身をしっかり読んでおりませんが、おそらく企業の法務、総務、経営企画の皆様、企業法務に携わる弁護士の皆様にはとても関心の高い一冊ではないかと思います。

ちなみに「経営にインフルエンスを与える法務」なるフレーズは(ソニー創業者である)盛田昭夫氏によるものです。正解のない道(経営)で光明を照らす法務の役割は、ずいぶんと前から期待されていたのですね。

まずなんといっても木村氏の個人的な意見が前面に出ている点は高い評価。コーポレートガバナンスネットワークの勉強会でも、木村さんは発表者に忖度なくハッキリと持論を述べます。さすがあの「伊藤レポート3.0」でおなじみ伊藤邦雄氏を社外取締役に迎える取締役会を事務局で仕切っている責任者です(笑)。←木村さん、ここマズかったらあとで消しますね(^^;)

どっかから誰かの知恵を引っ張ってきたような法務マニュアル本ではなく「経営者と対峙して企業価値向上のために貢献できる法務の在り方」を自身の言葉で示している点はすばらしく、これに賛同するか、批判をするかは読者の自由ですが、きっと法務の在り方を自分事として読者が思考するきっかけになることは間違いないと思います。「法務部門と広報部門との社内におけるかけひき」のような話題がコラムとしてたくさん掲載されていますが、社内ネットワークの実務を経験していないと書けない内容ですね。

つぎに木村氏=倉橋雄作弁護士=少德彩子氏(パナソニックHD取締役)と木村氏=山内洋嗣弁護士=明司雅宏氏(サントリーHD法務部長)による二つの鼎談です。木村さんと食事をすると、前から「倉橋先生はすごい!」「山内先生は実務家として秀逸!」といった話をよく聞いておりましたが、なるほど、この鼎談を読むと「企業に寄り添う弁護士」とはこういった考え方ができる人なのか・・・と納得しました。かといって明日から簡単に参考にできるわけではありませんが(笑)。少德さんも以前から存じ上げておりますし、明司さんは(もろもろの意味で?)以前からお世話になっていて、以前ご著書を当ブログでご紹介したこともありましたが、木村さんのご著書でおふたりの意見を拝読できるのはとてもありがたい(またしっかり読んだあとで感想を書きたいと思います)。

そして最後に「弁護士30名・法務マネージャー30名による『法務担当者として持つべき重要な要素』『法務担当者としてやってはいけないこと』のアンケート結果」が圧巻です。おそらく、ここだけでも多くの法務担当者、実務家が「読みたい」と思うでしょう。立ち読みするにはちょっと分量が多く、また珠玉の回答もちりばめられていますから、ぜひ購入して精読したいところです(笑)。チラっと読みましたが、ずいぶんと私と違う考え方の実務家もいらっしゃいますね。私がお勧めしなくても間違いなく売れる一冊だとは思いますが、ぜひ多くのビジネスパーソンにお読みいただきたい一冊です。

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2024年3月 4日 (月)

日本の上場会社は「社外取締役天国(パラダイス)」だと思う

本業の調査業務が佳境に入っておりまして、日曜日の夜くらいしかブログを更新できず申し訳ございません(もうしばらく、こんな状況が続きそうです💦)。さて、2月29日の朝日新聞ニュースによりますと、企業向け保険料の事前調整行為をめぐり、大手損害保険4社は業務改善計画を金融庁に提出したそうで、その経営責任として4社合計で社長を含む経営陣132人を処分した、とのこと。処分の内容は各役員の報酬減額が中心のようです。

ところで4社のリリースを拝見しましたが、いずれも社外取締役への処分が見当たりません(SOMPOホールディングスは、同社の社外取締役と損保ジャパンの社外監査役が報酬の一部を自主返納することを表明していると報じていますが、これは処分ではありませんね)。ここまで徹底した役員へのけじめを表明しているにもかかわらず、なぜ業務執行の監督責任を果たすべき社外取締役は「処分対象外」なのでしょうか?「いやいや私たちも責任を負うべきだ!」として報酬の自主返納を申し出たSOMPOホールディングスや損保ジャパンの社外役員さん方の心意気はわかりますが、やはり社外取締役は、どこの企業でも「お客様」なのでしょうか。

私が所属するガバナンスネットワーク関西勉強会でも最近申し上げましたが、日本企業は社外取締役にとってまさに「天国」だと思います。自戒をこめて、その理由を以下のとおり3つ指摘しておきたいと思います。

ひとつは「社内外から評価されない」ということです。たとえば第三者委員会などは「格付け委員会」があって、厳しい評価を受けます。しかし社外取締役は株主や社内取締役、従業員、監査役等から再任の可否を前提とする評価を受けたところを見たことがありません。他社の社外取締役との比較で評価を受けることもありません。社長と信頼関係を形成することは大切ですが、それは会社に迎合してモノを言わないのか、それともモノは言っているがきちんと緊張関係のもとで信頼を築いているのかは、わかりません。「専門性」に期待されているのであれば、それが企業価値向上にどのように役立っているのか、評価をしている企業もあまり見当たりません。だからこそ評価(およびその開示)が必要ではないでしょうか。

ふたつめは「責任を負わない」ということです。この責任は法的責任(善管注意義務違反)だけでなく経営責任も含みます(上記、損保大手4社の処分例などは典型例かと)。第三者委員会報告書をみても、社外役員の経営責任まで踏み込んだものはほとんど見当たりません(なお、私が委員長を務めた報告書のうち、2つは社外取締役の経営責任を認めて理由とともに明記しています)。「おかしい」と気づいても、社外役員の方々が声に出さないのは、やはり責任を問われる可能性が乏しいからではないかと。伊藤忠・ファミマの裁判(非訟事件)、ニデックによるtakisawaへのTOBの成立などが報じられても、社外取締役経験者の危機感はあまり高まっていないですよね( ;∀;)。

そして三つめは「マスコミからいじられない」ということです。有事になっても会社は最後まで社外役員を庇いますし(つまり社外役員の行動が世間に明らかにならない)、またマスコミも社外役員の職務の相場観がわからないのでいじりようがない。関西スーパーの社外役員の方々やリクシルの社外役員の方々が、有事にどれだけ一生懸命会社のために奔走していたか・・・というのは、それぞれの事案がドキュメントとして書籍化されたことで初めて世に知られることになりました(しかし書籍化されたころには、すでに世間の注目は別の事案に移ってしまっているわけです)。

3月3日の日経社説では、企業の持続的成長のために「企業統治の実質化」を進めよ、ということで、まだまだ社外取締役の数合わせに終始している企業が散見されることを指摘しています。しかし、企業だけでなく、株主と世間もこれだけ社外取締役に甘いわけですから、「報酬もソコソコもらえて責任も問われない、まさにパラダイス状態」の社外取締役に、期待されるような役割が果たされていないとしても、むしろ当然(行動において経済的合理性がある)のように思えます。期待されている役割を果たすためには、社外取締役自身が常に考え、実践のなかで失敗を繰り返しながら知恵を蓄える以外に方法はないと思います。

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