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2024年3月26日 (火)

(追記あり)小林製薬・紅麹問題が投げかける「サプライチェーン・コンプライアンス」

(短めのコメントで失礼します)昔からの小林製薬商品のファンとして、このたびの有事は残念でなりません。ただ、新たにサプリメント摂取者に20人の入院者が確認されるなど事態は深刻です。朝日新聞ニュースによると、小林製薬としては取引先に対応を要請しているとのことですが、紅麴原料を取引している52社(さらにはこの52社から原料を転得しているサプライチェーン)はいったいどこの企業なのか、宝酒造や大塚食品、紀文食品、竹屋(タケヤみそ)のように自主的に公表してもらわないと、消費者にはわからないのが現実でしょう。

おそらく小林製薬側としても取引先の自主判断に委ねざるを得ず、さらには取引先も、単に売上が減少するのでは、といった不安からではなく、その先にも迷惑がかかるのでは?といった判断からか自主公表をためらっているのかもしれません。しかし、早く公表して回収を急ぎ、消費者の使用を止めなければ被害が拡大する可能性も否定できません(小林製薬自身に対しても、こちらの読売新聞ニュースのように、なぜもっと早く公表しなかったのか、と疑問が呈されています)。

自社やサプライチェーンの損失よりも、まずはお客様の生命・身体の安全を第一に考えるという姿勢が、いま小林製薬のサプライチェーン企業に求められているのではないでしょうか。もし消費者庁や他社の公表によって自社の名前が公表されたりすれば「あの会社は顧客の安全よりも自社の利益を最優先に考える企業」といったレッテルをかなり長期にわたって世間から貼られることになりそうです。

とりわけ取引先企業の監査役(監査役員)の皆様、企業の持続的な成長の視点から、今どのような企業行動が求められているのか、経営陣と冷静に検討されることをお勧めいたします。まさに監査役の有事対応が求められているのではないかと。

なお、昨日のエントリー(追記)において、

BtoBだけでなくBtoCの売上も大きいだけに「安全」だけでなく「安心」も回復する必要があります。そこをどう乗り切っていかれるか。

と書きましたが、小林製薬は研究所サイトの「紅麹」のページを一時非公開にしましたが、社内で議論があり、再度公開したそうです(こちらのニュース参照)。決して紅麹自体が体に悪いわけではないのですから(たとえばNHKニュースの名古屋大学教授のコメント参照)このあたり「安全」ではなく「安心」を冷静に消費者に伝える難しさを感じます。皆様だったらどう対応されますでしょうか?

(3月26日12:45追記)さきほどアップされた日経ニュースによると、小林製薬は社内調査の期間中、厚労省に報告をしておらず、これを厚労相が遺憾とするコメントが出されたそうです。最初の情報提供から公表まで2カ月を要したことについては、様々な調査に時間を要したのではないかと推測しますが、さすがに厚労省には逐次報告をしているだろうと思っていました。このあたりは有事対応としていかがなものか、今後議論を呼びそうです。

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コメント

 小林製薬 紅麹事件は医薬・食品の健康被害問題に端を発し国会の予算委員会で首相が本件に言及するなど政治的な事案にまで発展する様子を呈しています。これは国民生活において健康が何よりも大切な事(病気が最大のリスク)とする、当たり前の常識に照らして当然とするものです。
 ただ、日本中のマスコミが今まさに報道する事件の概要を彼是とここで披露する積りは有りませんので本題に入ります。
 本日の株主総会日に会社が提出した有価証券報告書において<事業等のリスク>にどの様な記載が為されていたのか、また、監査法人の監査報告者においてこの事件がどの様に触れられているのかを強い関心を持って読んだところです。
 深く失望したと言うのがその結論ですが、やっぱりそうなるのかと妙に納得したのも事実です。結局は本質的で具体的な事業リスクを会社が正面から取り上げる事は無いし、有価証券報告書は一般的で形式的な情報開示の手段でしかない。況や 会計監査人のK.A.M.においてをや・・と。
 
 

投稿: 一老 | 2024年3月28日 (木) 19時42分

今週発売の週刊文春、新潮が小林製薬を大きく取り上げていましたが、その中で小林製薬が話題のドラマ不適切にもほどがある!のスポンサーだったことについて書いていました。最終回AC JAPANのCMが複数回流れどこかと思ったら小林製薬が自粛していたのでした。よくできた話。
最近小林製薬の株価が反発していますがしばらく調査に時間かかりそうですね。

投稿: 星の王子様 | 2024年4月 5日 (金) 19時31分

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