メディアは伝えないが大切な小林製薬「監査役会」の活動
先週、調査委員会の仕事も終えてホッとしておりますが、責任の重さを痛感するものでありました。いまは他の委員の皆様や、深夜2時、3時まで頑張っていただいたリーガルアドバイザー(法律事務所)の方々への感謝の気持ちしかございません。ということで(?)、報告書起案中でもウォッチしておりました小林製薬紅麹問題へのコメントです。
紅麴問題が初めて世に伝えられた3月22日以降、小林製薬のガバナンスや創業家役員も含む取締役の行動については多くの報道がありました。しかし、未だほとんど伝わってこないのが小林製薬の監査役(会)や会計監査人の有事活動です(立派な監査役さんが4名いらっしゃいます)。不正行為を知った取締役が直ちに監査役に伝えることや不正を知った監査役が取締役会に報告することは会社法上の義務なので、このあたりは「ガバナンスが機能していたかどうか」を知るうえでとても重要な論点です。私の日経インタビュー記事をご覧になった方からも、以下のようなメールをいただきました。この経理・財務ご出身の方は実際にNHKに抗議をされたそうです。
同社は、「監査役会設置会社」であり、①「監査役会」(「社外監査役」がいる)に「何時」、「本件事態」を「通知」したか、②「会計監査人」の「監査手続」上、「会計監査人」は、「「監査先」「経営TOP」との「ヒアリング」」を行う、従い、「何時」、「本件事態」を「通知」したか、も、また、重要であり、「この点の取材を欠く(NHKの)記事」」には、「重大な瑕疵」がある
たしかに厳しい批判に晒されているのは小林製薬の社内取締役や社外取締役の方々ばかり。しかし社内・社外取締役がいま全力を傾けるのは健康被害の原因分析、商品回収を含めた被害拡大の防止、健康被害を受けられた方々への対処、そして損害を受けた取引先への対応であり、自分たちの責任問題はそのあとでしょう。おそらく小林製薬の監査役会は、そのあたりの取締役の善管注意義務の実践を多方面から検証されていると思うのです。
世間の関心が高まっている「(健康被害認知から公表までの)2か月の空白」「厚労省・消費者等への報告遅延」がなぜ発生したのか、そこを社内で最も冷静に監視・検証できるのは4名の監査役の皆様(常勤監査役2名、非常勤監査役2名)だと思います。健康被害の原因が(おそらく)今後もよくわからない状況が続く中で、小林製薬はガバナンス改革に臨むことになると推察されますが、監査役会が機能していなければガバナンス改革は不十分なものとなります。ぜひ、今後は小林製薬自身によって監査役会の活動状況や意見表明を公表していただきたいですし、メディアも監査役会や会計監査人(いつ、紅麹問題を知り、業績への影響をどのように認識しているか)の活動に関心を向けてほしいと考えます。
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