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2024年5月20日 (月)

IHI子会社のエンジン検査不正-「悪く書き換える」ことのどこに問題があるのか

5月17日の日経ビジネスオンライン記事「燃費を『あえて悪く書き換え』IHIのエンジン不正が映す製造現場の葛藤」を興味深く読みました。エンジン試運転の検査結果の書き換えは、悪い結果をよい結果に改ざんするケースが多いのですが、IHI子会社では、逆に良い結果数値を悪い結果数値に見えるように書き換えたものが過半を占めたそうです(これが「長年の慣行」とのこと)。顧客から要求されている性能は仕様値に幅があるため、たまたま良い仕様値のエンジンを供給していると、次の製品の数値が平均程度でもクレームをつけられるから(説明をするのが面倒)、という理由です。

これは会計不正事案でも時々ありますね。記事では不二サッシ子会社の「逆粉飾」の事例が紹介されていましたが、親会社が「〇〇期連続増収増益」を目指していると、子会社としても(親会社の対外的目標を忖度して)利益を平準化させるために翌期に利益を繰り越すというのはよく聞く話です。「良く見せるのではなく、悪く見せるのだから誰にも迷惑をかけないのでは」という気持ちがあると改ざん、粉飾へのハードルが低くなるのでしょう。

記事の中で有識者の方が指摘しているとおり、偽装のハードルがいったん下がると、今度は悪質な偽装への抵抗がなくなってしまうので「悪く書き換えること」についても厳しく対処すべきは当然であります。ただ、それだけでなく親会社や顧客からのプレッシャーが原因で行われていたわけですから、自社の再発防止策の実践のみではまた再発してしまうタイプの不祥事だと心得ておくべきです。IHI子会社事案では顧客に対して、また不二サッシ子会社事案では親会社に対して、自社の再発防止策実践への協力要請とその応諾が不可欠だと思います。ステークホルダーの理解があって初めて自社の不正を根絶できるものと考えます(つまり経営者の本気度が試されます)。

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コメント

山口先生へ
すでに、ご存知かと思われますが、
明日(21日)のNHKのクローズアップ現代は、”守れない通報者” 内部告発を社会の利益にです。19時30分からです。見そびれた方向けに、翌22日早朝4時30分からBSで再放送されるようです。
内容は、「会社や組織の不正を通報窓口・行政機関・マスコミなどに通報する「公益通報」。調査によると通報者の3割が「後悔したことがある」と回答。通報したことで不利益を被ったという訴えが各地でおきている。職場での嫌がらせ、異動や降格など不当な人事が行われたというのだ。通報者を守る法律があるにもかかわらず、実態は逆だ。通報者を守るには何が必要なのか?不正に声をあげる人を表彰する企業も。通報を社会の利益へ。」とあります。

投稿: サンダース | 2024年5月20日 (月) 21時37分

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