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2024年5月28日 (火)

金融庁、政策保有株の適正開示調査へ 全上場企業を対象

5月27日の日経WEBニュースでは「金融庁、政策保有株の適正開示調査へ 全上場企業を対象」として、金融庁が全上場企業を対象に、取引先との関係維持などを理由に保有する「政策保有株」を適切に開示しているか調査を始める、と報じられています。2023年改正開示府令により、上場会社の有価証券報告書「株式の保有状況」では、保有目的が提出会社と当該株式の発行者との「営業目的」「業務上の提携等の目的」の場合には、当該事項の概要を開示することになりました。しかし、本当は政策保有目的であるにもかかわわらず、純投資目的として開示していない企業もあると推測されることから、当局による厳格な調査が行われるようです(こちらの日テレニュースも参考になります)。

ただ、このような当局調査は2022年6月のDWG(ディスクロージャー・ワーキング・グループ)報告書においても要求されていましたね。今後期待される取組みとして「純投資目的の保有株式について、純投資と政策保有の区分の考え方や両者の間の区分変更の動向、両区分における銘柄別の保有期間などの実態を調べ、適切な開示に向けた取組を進めることが期待される」と報告書に示されていました。今回は、その延長線上の実態調査ではないかと思われます。

開示府令で株式保有状況の開示が求められるようになったのは2010年改正からですが、これまではポピュレーションアプローチ、つまり開示規制の全体規律によって全体の底上げを図ることが主体でした。しかし2023年から始まった「ガバナンス改革2.0」の流れの中で、ハイリスクアプローチ、つまり民間の力(たとえば機関投資家)を借りることで個別事象の発生を促し、その結果として(右へ倣えの日本企業の性質を利用して)全体の底上げを図る手法に移行したようです。

したがって、今回の改正も機関投資家と企業との対話とアクション(個別事象の発生)を前提として、投資家が政策保有株式について直接交渉するための情報開示を念頭に置いた規律になるものと思います。つまり、違反行為にペナルティを課すというよりも、違反があれば投資家から見放される、役員解任(不再任)の提案(議決権行使)が出されるといった流れがインセンティブになろうかと思います。政策保有株式の存在をどの程度許容できるか、という点は、一律にルールで定めるのではなく、各企業と機関投資家との対話のなかで、当事者が個別に判断することが資本市場全体の効率的運用にとって適切かもしれません。

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コメント

http://stewardship.or.jp/action/pwg02_002/

知人からスチュワードシップ研究会の「政策保有株式を取り巻く問題提起のその課題解決に関して」という報告書を紹介されました。ご参考まで。 

投稿: ご参考(スチュワードシップ研究会) | 2024年6月 2日 (日) 08時07分

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