« 大隅=今井=小林「新会社法概説」は秀逸な会社法基本書(だと思う) | トップページ | BtoBにおけるカスタマーハラスメントと内部通報担当者の対応 »

2024年5月 8日 (水)

(5月10日追記あり)第1回公益通報者保護制度検討会(2024年5月7日)

本日(5月7日)より始まった公益通報者保護制度検討会に委員として出席してまいりました(たとえばTBSニュースはこちらです。当日配布資料はこちらで閲覧可能です)。自見大臣による冒頭挨拶のあと、第1回ということで各委員から検討課題(とくに事業者の対応体制整備・運用上の課題)についての意見が述べられました。やはり委員の立場がよくわかる意見陳述でした。

すでに自見大臣の会見でも明らかになっていますが、令和6年中に検討会意見をとりまとめて、(改正の必要があれば)来年の国会には改正法案提出の予定とのことで、急ピッチで議論が進むものと思われるますので、私自身の意見も積極的に述べるつもりです。本日の議論から(これは私の勝手な観測ですが)通報者に対する不利益処分禁止に関するペナルティの要否、事業者の公益通報対応体制整備義務違反に関するペナルティの要否、通報者への不利益処分に関する立証責任の転換あたりが議論のポイントになりそうです。著名な行政法、会社法、労働法、刑法、民訴法の学者の方々が委員として加わっておられるので、しっかりとした理屈が立つことが前提での法改正となりそうですね。

最後に座長(山本隆司・東大教授)が「前回の検討会でも議論されていた論点が多いかもしれないが、ただ前回と違って①『ビジネスと人権指導原則』のもとで、対外的に説明可能な「救済措置」の必要性が高まっていること、②ペナルティの議論については、前回はほとんど議論していなかった(いや、むしろ否定的な意見が強かった)「指定従事者に対する刑事罰」が現行法規にすでに存在していること、③海外動向としては、もはや「EU指令案」ではなく、すでにEU指令のもと、これまで公益通報者保護法が存在しなかった海外諸国でも国内法化されていること等を前提に(背景事情として)論点を検討しなければならない、とお話されていたのはかなり重い意味があると感じました。

このような検討会は非公開で行われることもありますが、検討会自体がyoutubeで公開されているため、今後も議事内容については当ブログでも逐次発信する予定です。なお、公益通報者保護法は3年に1回は世間の様子をみながら改正する類の法律です。今回は時期尚早であったとしても将来的に世間の状況次第では改正すべき事項についても議論の対象に含める必要があると思いました。

(5月10日追記)

5月8日付けNHK「時論公論」では「内部通報者への保護徹底へ 検討始まる」との特集が組まれております。期限限定ですがNHKプラスでご覧になれますのでお時間がございましたらご視聴くださいませ。

|

« 大隅=今井=小林「新会社法概説」は秀逸な会社法基本書(だと思う) | トップページ | BtoBにおけるカスタマーハラスメントと内部通報担当者の対応 »

コメント

 山本座長のおっしゃる通りかなと。社会全体の流れの中で、
自らの企業も実質的には利益になる可能性があることを考えて、公益通報者保護制度や内部通報制度(こちらは、不祥事があったときに経営トップの首をつなげるには有効)について、拒否を超えることが大切と思っております。

投稿: Kazu | 2024年5月 8日 (水) 18時18分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 大隅=今井=小林「新会社法概説」は秀逸な会社法基本書(だと思う) | トップページ | BtoBにおけるカスタマーハラスメントと内部通報担当者の対応 »