大隅=今井=小林「新会社法概説」は秀逸な会社法基本書(だと思う)
商事法務「社外取締役ガイドラインの解説」の第4版出版に向けて、鋭意執筆作業中でありますが、私が担当する項目にも「前掲注● 江頭〇〇ページ参照」という脚注がいくつかありますので、さっそく江頭・株式会社法第9版を購入しました。
本日(5月2日)も上記改訂版の執筆作業をしていたところ、大阪弁護士会からお知らせFAXが届いており、「新会社法概説」のご著者でいらっしゃる今井宏先生の訃報に接しました。享年101歳(大正生まれ)。謹んで今井先生のご冥福をお祈り申し上げます。
法曹ならだれもが知る「有斐閣の大隅・今井」といえば昔の「会社法論」、現在の「新会社法概説」ではないでしょうか(現時点では「新会社法概説第2版」2010年3月)。企業法務にマニアックな方なら同意していただけると思うのですが、会社法上の様々な実務上の論点について、他の基本書では言及されていないようなものも、この「新会社法概説」の脚注では丁寧に解説されています。平成26年、令和元年の会社法改正には対応しておりませんが、いまでも論稿を執筆する際にはかならず参照させていただいております。しかし「新会社法概説」の初版は2009年ですから、今井先生が85歳のころに大隅理論を継承する「会社法論」を(新しい会社法のもとで)全面改訂されたのですね。そのエネルギーには敬服いたします。
そういえば2010年2月のこちらのエントリー「社外取締役には株主総会への出席義務があるのか?」でも、「大隅・今井」の新会社法概説を引用しておりました(コメントしていただいている著名企業の法務担当者の方々は、いまごろどうしているのだろう)。持論が江頭先生や神田先生のご意見と異なっていたとしても、「大隅・今井」には「通説には異論の余地がある」と書かれていると「ほらほら、結構いいところ突いた発想だよね」と安心したりしておりました(ただ、後日自分が実務に関わる経験を積むにつれ、「通説」のもつ法的安定性の重要さに気づくこともあります)。
龍田先生ご逝去の時機に前田雅弘先生のご尽力で「会社法大要(第3版)」が出版されましたが、こちらの「新会社法概説」も第3版が出版されればとてもうれしいです。会社法には多くの基本書(良書)がひしめく時代とはなりましたが、有斐閣さんの力で(?)将来的には「第3版」が出版されることに期待をしております。
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