社外取締役こそ評価されるべきである-旬刊商事法務より
この時期、ダイヤモンド・オンラインの恒例記事「社外取締役バブル」では、日本の上場会社の社外役員(社外取締役・社外監査役)の報酬ランキングが実名で発表されています。「他人の懐事情」についてはどうしても気になってしまうので、いつもザーッと眺めるのですが年俸100万円台の社外取締役さんの数は結構多い(社外監査役さんなどは0円から100万円までの年間報酬の方も結構いらっしゃいます)。かたや5000万円、4000万円といった高額報酬をもらっておられる社外取締役さんもいらっしゃいますが、どうなんでしょう、同等に「期待される役割」を果たさねばならないのでしょうか?もちろん不祥事が発生した際等の善管注意義務のレベルについては全く同じであることは理解しているのですが、毎月10万円でガバナンス・コードが期待する役割を果たしうるインセンティブはあるのかどうか。
さて、旬刊商事法務最新号(2024年6月15日号)「スクランブル」に「社外取締役こそ評価されるべきである」とのタイトルの論稿が掲載されています。最初タイトルを読んだとき「ん?社外取締役こそガバナンス改革の旗手として称賛されるべきである、との論稿なのかな?」と思いましたが、そうではなく「取締役会の実効性評価などがさかんに行われているが、社外取締役の実効性こそ評価されるべきである」といった趣旨の論稿でした。つまり社外取締役は玉石混交であり、会社に有害な人もいれば有益な人もいるということ、本来注力すべきは監督者として(結果責任としての)「指名」「報酬」への関与(評価や基準作り)であるとの厳しい内容でした。
私もおおむね賛同いたします(ただ、会社とステークホルダーとの利益相反事項について主導的役割を果たすことも「株主の代弁者としての」重要職務と理解しております)。なかでも「社外取締役が『シナジーがある』とかないとか、その戦略では効果がないから違う戦略で挑むべきだとか、中身の議論を行うことはプロの経営陣からすれば時間の浪費になることがほとんどである」という厳しい意見は、おそらく間近で社外取締役のお世話をされてきた立場の方ではないかと思われるほど辛辣ですが、的を得ているのではと。ただ、高い報酬をもらっている以上は、やはり何かの形で経営面での意見形成に爪痕を残さねば・・・と(まじめに)考える社外取締役のお気持ちもなんとなくわかります。
執筆者が「社外取締役こそ評価の対象となるべきである」と主張する点はまことにそのとおりであり、社外取締役については毎年社内の取締役や監査役によって「長所と短所」について忌憚なく評価されるべきです。とりわけ「期待された役割」を果たしているか、果たしていないとすればどこに課題があるのか、という点についてはきちんと意見交換をすべきです。
ただ、月10万円の報酬をもらっている社外役員への評価と、月200万円もらっている社外役員への評価って、その判断基準において同じなのでしょうかね(^^;)?「なんとか頼み込んで(月10万で)来てもらっているわりにはよく頑張っている」とか「年2400万円の報酬に見合う活躍はまったくみられない」といった評価に(現実には)なってしまうのではないかと。たとえば「社外取締役の実効性評価」が開示されるものであるならば、少なくとも私は「(10万円のわりには)がんばっている」という評価のほうが「(3000万ももらっておきながら)期待はずれ」と評価されるよりも良いですね(開示されるくらいなら「本業にキズがつくので社外取締役などまっぴらごめん」となる方も出てくるかも)。
執筆者も述べておられるとおり、昨今、社外取締役に対する市場からの期待はますます高まっています。もちろん「上場会社の社外取締役」という括りがあることは認めますが「社外取締役論」を語るにあたっては、どの業界の、どのレベルの企業の社外役員を想定して語っているのか、そのレベル感を前提としなければ腹落ちする議論にはならないように思います。
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コメント
アメリカと日本で、取締役の位置づけズレていますよね。
アメリカでは、取締役は株主(=国民)が選挙で選んだ代表(=国会議員)であり、累積投票制もあって、様々な株主の相反する利益をそれぞれ代弁する存在であり、取締役会は国会であり、「社外取締役」はさしずめ「野党議員」ですね。
日本では、「取締役会」=「内閣」というイメージが強く、各事業部(=省庁)の代表者(=大臣)の集まりであり、「社外取締役」はさしずめ「無任所大臣」で、大所高所からの「助言」などが責務と思われがちです。法律の条文はそうでもないのに、なぜか「内閣」なんですよね。
「社外取締役」を「野党議員」のイメージで語るか、「無任所大臣」のイメージで語るか、話が合わない原因になります。
個人的には、「社外取締役」=「野党議員」であり、その最大の責務は「社長をクビにすること」というのが、しっくりきます。
投稿: 取締役と言えば | 2024年6月29日 (土) 00時38分