(追記あり)積水ハウス新築マンション解体騒動-事実調査委員会を立ち上げるべきでは?
地面師事件の際、私はライバル会社の取締役だったので発言は控えめにしておりましたが(^^;)、現在は退任しましたので思うところを素直に発言したいと思います。以下は積水ハウスを揶揄するものではなく、売上高3兆1000億のグローバル企業である積水ハウスの信用を維持する視点からの個人的な意見です。
本日(6月11日)、積水ハウス社から富士山が見える国立市のほぼ新築マンションの解体騒動についての正式なリリースが出ました。このリリースで、なんとなく「コンプライアンス経営が徹底している企業だ」と納得した方もいらっしゃるかもしれません。しかし、テレビ朝日の独自取材で判明した事実によると、積水ハウスは5月22日に工事完了届を自治体に提出して6月4日に廃業届を出した、とありますので、わずか2週間(営業日でいえば8日間)の間にGOサインから中止・解体へと判断が変更されたことになります。つまり、短期間で経営幹部が現地視察→「これは近隣の景観を損ねていてマズイ」との経営幹部の意見→入居予定者への引渡し中止、解体決定に至ったわけです。完成したマンションは、積水ハウスにとっては「魂」であり「建築のプロとしての誇り」でしょう。その「誇り」を(なんら法令違反もなく)自ら解体するわけですから、相当に屈辱的な出来事だと推測します。
それにしても実営業日8日の間でこのような経営判断を下すことは(中小の事業者ならともかく、大手事業者において)可能なのでしょうか?法令違反もないのに工事が完了した10階建マンションを解体するということは、専門家の方々も異例中の異例と取材に答えています。仮に急遽中止方針となったことが真実だとしても、そもそも工事完了届を提出した直後に「他の部署の人たちや(即時中止の決定権限を有するような)経営幹部」がわざわざ国立市の冨士見通りまでやってきて、最終決定を下さねばならないほどの切迫した事情とはいったい何だったのでしょうか?正式リリースだけではよくわからないのです。
また、今回の騒動は(現状のままですと)多くのステークホルダーに多大な影響を及ぼします。報道されているとおり、別の事業者が今後国立市にマンションを建設することに困難が伴う(何か圧力をかけられて中止に至ったのではないか、との憶測)、その結果として近隣地域の不動産価値が低下する(との推測)、「建物が建った後でも解体の可能性があるかぎり住民運動を続けることができる」との希望を、全国のマンション建設反対を唱える地域住民に与える(その結果、マンションを新たに購入する人たちに「景観妨害は不動産の瑕疵になり得る」として不安を与える、入居後の不動産価格の下落の可能性もある)、何の法令違反もないのに完成マンションを(不適切な事業判断を理由に)事業者が自主的に解体した、ということは地元自治体の条例は「ザル法」に過ぎない(住民を守れない)との印象を地域に与える、そもそも今後の自治体における街づくり計画に支障を来す等々。
結局、専門家ですら「こんなことは見たこともない」と述べている事態なので「空白の2週間」に何があったのか、積水ハウスが説明しなければ様々な疑惑、憶測、推測が独り歩きをして、これをメディアが大きく伝えることによって社会に混乱を来すものと考えます。私がかねてより積水ハウスをリスペクトしている理由は「積水ハウスは建物を作って終わり、という企業ではなく、建物を通じた環境に優しい町づくりという『ソフト』も提供して人生を応援する企業」だからです。そうであるならば建築計画の時点で、当然のことながら「マンションのある町」への環境的配慮は当然なされるはずと思っております。したがって、ここは外部第三者による調査委員会を立ち上げて、この空白の2週間の詳細な経営判断の過程を「建物を提供するだけでなく、まちづくりを提供する企業であるがゆえに(自らの存在意義となるプライドを捨てるという)苦渋の選択をした」ということが世間にわかるように伝えるべきと考えますが、いかがでしょうか。
(6月13日追記)読売新聞ニュース、朝日新聞ニュースが伝えるところでは
東京都国立市で完成を間近に控えながら解体が決まったマンションをめぐり、国立市の永見理夫(かずお)市長は12日に開かれた市議会で、事業者の積水ハウスの対応について「非常に遺憾だ」と述べた。同社に対して今後、住民に対して丁寧な対応を取るよう文書で要請したことも明らかにした。
とのこと。昨日申し上げたとおり、結果として「行政の顔をつぶした」ことになるわけですからこのようなコメントになるのは当然でしょう。さて、積水ハウスは文書による要望に対してどのような対応をとるのでしょうか。
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