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2024年6月 6日 (木)

日本企業の品質不正事案に思う-bad news first!は簡単ではない

昨日来トヨタ・ホンダ・ヤマハ等の型式指定不正の話題で持ち切りですが、現場の不正を本社が早期に知ることができるような組織風土を構築する必要がある、下からなんでも上がってくるような心理的安全性の高い組織作りが不可欠である、との有識者の意見をよく聞きます。いわゆる“bad news first”ということだと理解しますが、そもそも現場がbadと認識していないという根本要因もあるのですが、かりにbadと認識したとしても、実際のところそんな簡単に現場の不正情報が通常のレポートラインに届くはずはないと思っております。

なぜなら忙しい上司(管理監督者)は、悪い情報を上げた部下に対して解決策を求め、その実施を求める、つまりよほどコンプライアンス対応の優先順位が高い上司でないかぎり、部下に(不正と確信できる証拠の収集や、不正をなくすための解決策について)「で?どうするの?」と丸投げしてしまい「言ったもん負け」になってしまうからです。上司が不確かな情報のままさらに上司に情報を上げるということはほとんど期待できないわけでして、部下としては疑問を抱きつつも「それなら黙っておいたほうがトク」となるのは自明です。

上司(管理監督者)にとっては、日々の会議や部下の指導監督、派遣を含めた人事対応、労務対応、自らの業務執行、クライアントとの折衝等のほうがコンプライアンスへの取組みよりも実際には優先順位は高いので、その中間管理職の優先順位をどう変えることができるのか、そこに注力しなければ不祥事、とりわけプロセス軽視の品質不正事案はなくならないでしょう。否、失礼な物言いで恐縮ですが、皆様方の会社でもすでに品質不正は現在進行形で継続しているかもしれません。誰が見ても「重大な不正」であれば別ですが、この「重大性」や「不正」という点に解釈の余地がある以上、まず間違いなく、通常のレポートラインによって「bad news first」が励行されることは至難の業です。

中間管理職の方々は、やれ「働き方改革」だとか「ダイバーシティ」だとか「ハラスメント対応」だとか、もう優先順位の高いマネジメントに負荷がかかりすぎていて、不正リスク対応までは手が回らない(問題意識を持っている人にまかせたい)、という現状を経営陣はどれほど意識されているのでしょうか。ということで、匿名通報も含めた内部通報制度の活用が推奨されるところです。

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