大手自動車メーカー認証不正-改めて問う「安全」と「安心」
2016年9月18日のエントリー「不正の迷宮-三菱自動車(スリーダイヤ転落の20年)」では、三菱自動車の燃費不正事件が発生した際の、本誌の対談でトヨタ自動車、マツダの元開発責任者の方々(実名)が「当社ではこういった理由があるから品質不正は起こさずして納期を守ることができます」といった話をされていて、私もなるほど・・と納得したことを記憶しております。
しかし、このたびの認証不正発覚時に会見を開いたトヨタ、ホンダ、マツダの説明から見えてきたのは「現場の負担増」や「認証制度の軽視」という(他社と同様の)組織上の歪みが露呈した、ということでした(たとえば東洋経済「トヨタ、ホンダでも発覚、止まらぬ認証不正の連鎖-ルール破りは論外だが制度の見直しは必要」参照)。
品質不正事案を語るときには毎度申し上げるところですが、おそらく社長さん方がおっしゃるとおり「(自動車の)安全性には問題がない」のでしょう。しかし、本当に安全かどうかは専門知識を持たない消費者にはわからない。つまり国交省や国際基準が定める認証ルールに準拠しているかどうか、という「安心」をエビデンスで証明してもらわないと信用できないのです。そのエビデンスが(認証不正によって)提出できないものだから、国民に最終責任を負う国交省がエビデンスに基づいて「安全です」と宣言する必要があり、そのための立ち入り調査や検査が行われています。
自動車メーカー全体で不正が発覚したことによって、どこでも不正は起きていたということが判明しました。ということで、認証ルール自体を見直すべき、との意見も出てきています。しかしEVや自動運転、AI制御といった新しい技術が増える中で、おそらく(国際基準に照らして)認証ルールは増えることはあっても減らすことは現実的ではないような気もします。経営判断としては、これからも品質不正が一定の頻度で起きることを前提として、その都度「安心」を回復するためのコストを負担すべきか、それとも(たとえ人的・物的資源を用いてでも)抜本的に不正が起こらない認証システムを導入するコストを負担すべきか、各社で早急に検討することが求められるのではないでしょうか。
小林製薬の紅麴問題やダイハツの品質不正問題も同様ですが、不祥事が発生すると、個社特有の悪質性を特定したくなり「やっぱり、あの会社にはこんな問題があったのだから不正が起きても不思議はないよね(だから他社では起きないよね)」と納得(安心)したくなります(いわゆる「因果推論における認知バイアス」ですね)。しかし、それが「小林製薬の製造工程の問題ではなく業界全体の機能性表示食品の問題」だったり、全自動車メーカーに及ぶ認証ルール自体の問題だったりすると、突然攻撃の対象が変わる等、世間の風向きが変わります。いやいやコンプライアンス経営は本当にむずかしい。
| 固定リンク

コメント