公益通報制度にCFE(公認不正検査士)による「中立調査人」活用を
内部告発者(公益通報者)の悲劇が相次いでいます。兵庫県知事の不正行為疑惑をメディアに文書通報した公務員の方、職員による公金不正使用を和歌山市に内部通報した公務員の方など、通報者のプライバシー配慮が不十分であることによる心理的負荷は、我々の想像を絶するものがあったのでしょう。現行の公益通報者保護制度が通報者を守れない、という現実を改めて認識させられました。
もちろん、安心して内部通報・内部告発ができるように、さらなる法改正も大切ではありますが、せっかくCFE(公認不正検査士)の資格者が日本にもたくさん誕生しているので(たしか世界で資格者の数では米国に次いで2番目に多い)、まずは現行法のもとで、企業の自助努力によって通報者保護の徹底を図るべきです。
たとえば企業は内部通報の外部窓口業務、調査業務、さらには通報者への是正通知やアフターケア業務をCFEの資格者による「中立調査人」に委託することを検討すべきです。私も現在、総合商社、製薬会社(いずれもグループ会社を含む)及び大手機械メーカー(こちらは単体のみ)において「中立調査人」契約を締結しております。中立調査人(外部窓口)には実名通報ですが、会社には匿名通報として扱い、中立公正な立場で不正調査業務を行います。(小さな部署内の不正行為でも通報者を守れるように)「通報者の秘密」だけでなく「通報がなされたことの秘密」まで守ります。調査人の報酬は顧問料ではなく、すべてタイムチャージ(業務委託報酬)です。もちろん「公益通報対応業務従事者」としての指定を受けています。
資格者は弁護士や会計士なので職業上の守秘義務があります。厳正に調査を行いますので、必ずしも通報者が欲する事実認定に至るわけではありませんが(したがって通報者から落胆されることもある)、プライバシー保護という面では安心して内部通報制度を活用できますし、会社側としても安易に内部告発をされない、というメリットも大きいです。自社の内部通報制度が機能していることを対外的に示す際に「CFE資格者による中立調査人制度を活用している」ということを広報として活用することもできます。
不正対策は早期発見・早期是正がきわめて重要です。中小企業の皆様も「共同中立調査人」を活用することも可能です。本気で公益通報者を保護する方策を検討して、さらなる悲劇を招かないようにしなければ。
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コメント
兵庫県知事パワハラ案件関西テレビに続き神戸新聞が詳報 職員の4割が加盟する労組が知事として最大限取れる責任を取るよう申し入れ書を手交
鹿児島のローカルFM局大量退社とか次へと次へと不祥事が湧き上がってきます。
先日から日経やさしい経済学が不祥事をなくす経営を連載していますが、企業自衛隊自治体などいろいろな人がコンプライアンスを改めて熟慮すべきかもしれません。
投稿: 星の王子様 | 2024年7月10日 (水) 13時21分
企業内部の内部通報窓口の担当者のほとんどは、窓口業務以外にコア業務を持っており、いざ通報があるとその対応に多くの時間と労力を注ぐ必要があり、しっかり対応しようとするとコア業務をそっちのけにするくらいの姿勢が必要です。一時的であるにせよ負荷が大きい役回りですが、かと言って対応の品質維持のためには簡単にアウトソースすることを躊躇うのが現実です。
この意味において、「CFEによる中立調査人」を活用することは、内部通報への対応品質を向上させ、かつ企業内部の通報窓口の負担軽減になる有用な打開策になると感じました。
投稿: MS | 2024年8月 6日 (火) 09時28分