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2024年7月19日 (金)

会計不正事件はますます発覚する(コロナ禍のツケがいよいよ出てくる)

7月16日の日経ニュース「企業の会計不正が3年連続増、過去最多に迫る 24年3月期」では、日本公認会計士協会の調べとして、2024年3月期に会計不正を公表した企業が前の期比9社増の45社に上ったことが判明したそうです。公表企業は3年連続で増え、過去最多だった20年3月期(47社)に迫る、とのこと。架空仕入れや在庫の過大計上などの粉飾事案が多かったようです。

コロナ禍で監査が機能しなくなった2020年以来、すでに多くのエントリーでコメントしてきましたが(たとえば2021年のこちらのエントリー)、会計不正事案の発覚が急増するのは当然であり、おそらく2025年から26年ころにかけてコロナ禍に始まった会計不正事案の発覚はピークを迎える(発覚して5年遡って過年度決算を訂正する)ものと推測しています(いや、確信かもしれません)。そんなに人間は強くないわけでして、あれだけ多くの企業でリモート監査やリモート協議などが行われた以上、役員や現場責任者が「これさいわい」と粉飾に手を染める(また、粉飾を知りつつ黙認する)のはしかたがないと思います(これは「性悪説」ではなく「性弱説」に立脚した考え方です)。

当時の日本企業は「どうしても6月に定時株主総会を開催したい(延期はしたくない)」という意向が強かったため、監査意見を述べないといけない資料が監査役員に回ってきた当日に(とりあえず)意見を出す、という異常事態となりました。会計不正が横行してもやむを得ないですよね。

ただ、記事にあるように国税の税務調査が正常化したことや、会計監査人に内部告発が増えたこと、フォレンジックス調査の精度が上がってきたことなど、モニタリング機能も正常化するなかで、会計不正は発覚しやすい環境が整ってきました。先日、こちらのエントリーでご紹介したようなアクティビストによる会計不正疑惑の追及やこちらのエントリーのように会社と意見が食い違うことも厭わない会計監査人の姿勢なども「会計不正発覚」急増の要因になろうかと思います。

なお会計不正の発覚について忘れてはならないのが「粉飾事案」だけでなく「横領事案」も増えるということです。2020年から21年当時、当事務所にご相談のあった案件については、粉飾よりもむしろ横領(会社資金の不適切使用)事案のほうが多かった。粉飾は財務報告内部統制がしっかりしていた企業に多かったのですが、横領は内部統制が破綻している企業に多かった記憶があります。前者は不正を認識していた社員が多いのですが、後者はブラックボックス化しているなかでの不正となり、内部告発でも表面化しにくい。今後は次第に横領事案の会計不正が発覚するケースが増えるものと予想しています。

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