今後、調査委員会の設置が要請される重要インシデントについて
アラン・ドロンさんの代表作といえば「太陽がいっぱい」。悪事を隠し通して我が世の春を謳歌していたとしても、最後には(思いもつかないところで)悪事が露見して全てを失う・・・というのはビジネスの世界でも全く同じですね。ということで、不正疑惑が発覚した時点において、企業は大けがをしないためにも自ら調査委員会(社内もしくは社外)を設置することがトレンドになっております。その調査委員会設置の必要性は、今後ますます高まるものと思っておりまして、以下のような場面でも設置要請が増えるはずです。
まず、外部通報や株主の意見に基づく会計不正疑惑です。エネチェンジ社の例(外部通報)やレーザーテック社の例(大株主による疑惑表明)が典型ですね。会計監査人への外部通報については2015年「監査における不正対応基準」があるので当然かもしれませんが、大株主が詳細な分析をもとに会計不正疑惑を指摘した場合などは、会社としての真摯な回答が必要になってくるのではないかと。
つぎに政策保有目的株式か純投資目的株式か、外部調査によって保有目的を判断することが要請されることが増えそうです。アクティブ投資家だけでなく、パッシブ投資家からも要請が強くなってきましたね。日経の記事で「純投資株式」と言われる株式の中にも多くの政策保有株式が含まれていると考えている機関投資家が圧倒的に多いという事実からも、外部調査委員会による調査要請が株主から要請されることが増えると思われます。
さらに(非開示のままで)経営陣によるセクハラ・パワハラに関する調査の需要は増えそうです。兵庫県知事の問題に代表されますが、とくに最近の発覚事案では経営陣のハラスメントは一発レッドカードとなることが多いので、会社としても通報や告発によって経営者のハラスメント疑惑が生じた場合には、独立性の高い調査委員会によって評価を行い、その後(辞任勧告や公表の要否も含めて)会社対応を検討する、という方向性が考えられます。
これらの問題に共通することは、アクティビスト投資家の行動に、(議決権行使結果が開示されるようになった)パッシブ運用投資家が追随する(追随せざるを得ない?)ような話題だという点です。調査委員会を設置するかどうかは会社側の判断になりますが、エンゲージメントによって上記のような委員会設置の要望がアクティビスト側から提案されることが多くなるように思います。
最後に「親会社経営陣のグループ不正問題への責任判断」についても調査委員会設置が要請されることが増えそうな予感がします。損保業界では保険代理店問題によって、大手銀行ではグループ間の顧客情報漏えい問題によって、さらにはトヨタ自動車ではグループ全体において品質不正問題が発覚したことから、世間的には親会社役員の責任追及があって当然との機運が高まっています。一方、みずほフィナンシャルグループにおける子会社反社不適切管理への株主代表訴訟では「親会社役員の法的責任」は否定されたことから法的責任追及には限界があることが認識され、今後は調査委員会による経営責任判断への要請が強まるのではないでしょうか。
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